訪日外国人とはいったい何語で話すべきなのか 英語は単なる一言語?それとも国際共通語?

✎ 1〜 ✎ 62 ✎ 63 ✎ 64 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

文部科学省のデータによると、英語を第1言語(母国語)として使用する人は世界に4億人ほど存在し、英語の使用人口は5億人、公用語・準公用語とする国の人口は21億人のようです。使用人口にどのような人が含まれているのかはわかりませんが、非ネイティブの英語使用者のほうが、ネイティブスピーカーよりも数が多いというのは間違いがなさそうですね。

つまり、国際共通語として英語を身につけたいのであれば、ネイティブのような英語を話す必要はなく、基本的には非ネイティブの人たちとコミュニケーションがとれるような「英語」をマスターすればいいということです。ネイティブでないとわからないような表現は使わずに、非ネイティブ同士でわかりやすい「英語」を目指していくのがベストでしょう。

ただ、こういう議論になるとネイティブのような英語を目指して学ぶことが「悪」のように言われることがありますが、英語が好きでネイティブみたいになりたいという人がそれを目指していくことはすばらしいと筆者は思います。それは学習者、個人個人が決めればいいでしょう。

この視点から言うと、ネイティブスピーカー側からの歩み寄りもとても大切だと思います。非ネイティブと話すときにはできるだけ平易な表現を用いて、相手にわかりやすく話すことを心がけてほしいですね。つまりネイティブはネイティブで、「国際共通語の英語」を身につける必要があるということだと思います。

 基準はどこに?

でも、単なる一言語である「ネイティブの英語」と「国際共通語の英語」の境目はいったいどこにあるのでしょうか。われわれがネイティブと話して通じないとき、どちら側が「国際共通語の英語」を話せていないのかを見極めていくのはとても難しいですね。

われわれの英語力不足なのか、ネイティブが難しく話しすぎているのか、この基準はどう決めたらいいのでしょう。発音や単語レベル、表現方法など、World Englishesにはバリエーションがたくさんあります。これらの最大公約数が国際共通語としての英語ということになるのかもしれませんが、「これがその『国際共通語の英語』ですよ!」と示していくのは、かなり厳しそうですね。ひたすら、たくさんの非ネイティブの人と英語でコミュニケーションをとって、お互いにわかり合えるポイントを見つけていくしかないのでしょうか……。

でも、相手をおもんぱかりながらコミュニケーションをとるというのは、われわれ日本人が得意とするところ。少なくとも、「このくらいの英語でいいのかな?」と調整しながら話せるくらいの英語力を身に付けておくといいかもしれませんね。もしくは、上手に表現できなくてもいいので、「なんとか自分の言いたいことをシンプルな英語で伝えられる」くらいを目標に学習するのがいいかもしれません。

ジョンと険悪なムードになったあと、お互いに空気を読んで、「日本人が英語を話せない」という話題には触れず、昔のように楽しく時間を過ごしました。彼が帰国した後に、お礼のメールが届いたので、筆者も反省して返信メールで謝ることにしました。「ついムキになってしまったけど、『国際共通語として、英語が通じてほしい』ということだったんだよね?ごめんね」と書いて送りました。

ジョンからの返信にはローマ字で「Daijobu. (大丈夫)」と書かれていました。わざわざ日本語で書くあたり、彼も彼なりに反省してくれたのかと思いきや、そのあとには「But you should do a better job in teaching English to Japanese people. (でも、オマエがもっとしっかり日本人に英語を教えればいいんだよ)」ですって……! 友よ、また10年くらい会わずに過ごしましょう(笑)

箱田 勝良 英会話イーオン 教務部 チーフトレーナー

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はこだ かつよし / Katsuyoshi Hakoda

1972年静岡県熱海市生まれ。1995年筑波大学国際関係学類卒業、株式会社イーオン入社。

講師として、これまでに約1万人を教える。スクールの講師を経た後、法人部教務コーディネーターとして、多くの企業の研修カリキュラム企画と講師を担当。楽天の社員の英語力研修も担当した。TOEIC(R)テスト990点満点、実用英語検定1級。

学生時代には1年間の留学以外には海外経験なしで、日本に住み暮らしながら英語力を飛躍的にアップさせた。その自身の経験を基に、現在は教務部のチーフトレーナーとして、イーオン全体の講師の研修やカリキュラム立案に関わる。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事