メダル23個「怪物」フェルプスの意外すぎる今 世界記録を破られても幸せな理由
電話の向こう側から聞こえる悲しげな声は、「大事なモノ」を失って明らかに取り乱していた。世界水泳選手権の行われていた韓国・光州はすでに夜遅かったが、マイケル・フェルプスと妊娠中の妻ニコール、2人の息子ブーマー(3歳)とベケット(1歳)が休暇をとっていた地球の反対側は朝食の時間だった。
先月100メートルのバタフライ世界記録をアメリカ人ケーレブ・ドレッセルに破られたことを聞くために、私は韓国からフェルプスに電話をしたのだ。さらにハンガリー出身の19歳のクリストフ・ミラークは、大会の早い段階で200メートルのバタフライでフェルプスの世界記録を打ち破っていた。
世界記録を破られても悲嘆していない
フェルプスはかつてバタフライの達人だった。彼は現在、2001年以来初めてバタフライでの世界記録を保持していない。
しかし、34歳のフェルプスは悲嘆していなかった。彼はドレッセルのスムーズでスピーディーな泳ぎについて畏敬を持って語ったが、ブーマーがぬいぐるみのベビーモンキーが見当たらないと大声を上げていたので、彼も電話で声を張り上げる必要があった。
数々の世界記録がフェルプスの自意識に作用していたことはそれほど前のことではなかったので、記録を失っても冷静さを保っていた電話口のフェルプスに興味を持った。1週間後、フェルプスはアリゾナ州のパラダイスバレーカントリークラブで世界記録が失われていくことと、引退後の生活について語った。
――200メートルバタフライで最初のオリンピックチームに入り、世界記録を樹立、その後18年間、200メートルバタフライの世界記録を保持していた。両方のバタフライの記録を失ったとき、2つの「家宝」を失ったような気がしたか。