人はなぜ年金に関して間違えた信念を持つのか もうすぐ始まる年金報道合戦に要注意!

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最近は、ヒューリスティック年金論を克服してもらうために、次のクイズを出している。

<初級>
□公的年金は保険である。民間の貯蓄性商品とは根本的に異なる
<初段>
□公的年金は65歳で受給しなければならないものではない。60~75歳の(受給開始年齢)自由選択制である
<二段>
□支給開始年齢の引き上げと、受給開始時期(年齢)の自由選択の意味・違いがわかる
<三段>
□マクロ経済スライドの意味・意義が何となくわかる
<四段>
□将来の給付水準は絶対的なもの、固定的なものではなく、可変的なもの、経済環境などによっても変わっていくが、自分たちの選択や努力によっても変えていけるものだということがわかる
<五段>
□対物価の実質価値と、対賃金の実質価値の違いがわかる
<六段>
□5年に一度行われる財政検証で行っているのは現状の未来への投影(projection)であり、将来の予測(forecast)ではないことを理解している
<七段>
□年金はPDCAサイクルで定期的に状況を確認しながら改革を行い続ける制度であり、100年間何もしなくてもよい(安心)ということでなく、100年くらいを見通して、持続可能性を保つためにシステムの再設計を繰り返していくことが組み込まれた制度だということがわかる
<八段>
□積立金がおよそ100年先までの公的年金保険の給付総額に貢献する割合は1割程度であることを知っており、積立金運用に関するスプレッドの意味がわかり、名目運用利回りでの議論は間違いであることを理解して、人に説明できる
<九段>
□「Output is central」の意味を知っており、積み立て方式も賦課方式も、少子高齢化の影響から独立ではいられないことを人に説明できる
<師範>
□年金改革の方向性を知るためにはオプション試算に注目すべきことを知っており、オプション試算が行われるようになった歴史的経緯を人に説明できる

もうすぐ始まる年金報道合戦にスタンバイしている年金記者さんたちには、ぜひとも、<師範>の域には達しておいてもらいたい。いや、それは職業上の義務だとも思う

最近の年金の誤報

と言っても、それはなかなか難しいようで、例えば、今年3月8日には、次のような、完全な誤報が出されているのがメディア界のレベルなのである。

「公的年金、運用想定甘く 利回り最大5% 将来世代にツケも」『日本経済新聞』2019年3月8日2面

この記事では、次の表を示していた。

ここにある「(注)名目運用利回りは実質値に賃金上昇率と物価上昇率を加えたもの」は極めて重要な意味を持つので記憶しておいてもらいたい。
表について記事は次のように解説している。

次ページ繰り返す全国紙の誤報
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