結婚遠ざける「生涯子育て」という日本的発想 いくつなっても責任から逃れられない

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山田:このように、成人した子の責任を親が取る、親がたたかれるというケースは日本では多いですよね。欧米ではありえない。アメリカではむしろ犯罪者の親には激励や同情の手紙が届くそうですよ。日本は成人しても子育ては終わらない。だから、パラサイトシングル問題も起きるわけです。こうした意識が社会をマイナスの方向に回している。

植草:成人したら苦労しようが何しようが本人の責任と考えた方がいいですよね。

増える「オタク同士」の結婚

山田:子育ては生涯にわたって責任がつきまとい、経済的にも負担が大きいという認識は、若い世代にも浸透しています。学生に「あなたは30年後、親以上の生活をしていますか」と質問したところ、「私は結婚しないつもりだから親以上の生活が送れているはず」「私は3人兄弟だけど、私自身は将来子どもは2人までと決めているから親よりいい生活ができるはず」という回答がありました。子どもがいること、子どもが多いことは生活が厳しくなるという考え方なんです。

植草:そういう意識では、養子を迎えようという夫婦はなかなか増えないでしょうね。男女の意識のズレでいうと、最近、40、50代の男性にゲームやアニメ、アイドル好きが増えてきたことも気になります。頭の中は20代の独身男性と同じ、人間的に成熟していないように思うんです。これでは婚活は厳しい。

山田:確かに、女性アイドルのコンサートに行くとファンが中年男性化しているそうですよ。日本はそれを恥ずかしいと思う社会ではない。むしろそれで1人の生活を楽しみ満足できてしまう。それが結婚不要社会の特徴です。

ただ、趣味やこだわりが強い人は、逆に婚活に有利な場合もあります。同じような趣味、こだわりを共有することでつながることができるからです。非正規雇用同士で結婚したカップルにインタビュー調査をしたら夫婦ともオタク的趣味の持ち主でした。県の結婚支援事業でお見合いをしたら、お互いの趣味で数時間も語り合いすっかり意気投合して結婚を決めたそうです。オタクで生活を楽しんでいれば結婚は不要ではあるんですが、逆にそれがきっかけで話があって結婚することもある。

植草:確かにそういうカップル、弊社の会員さんにもいました。デートは秋葉原。2人で向かい合ってただゲームをしているだけで会話がないのに、「ゲームで気持ちが通じた、結婚します」と。プロフィールにも、趣味の欄にアニメやゲームと書く人が増えています、男女とも。

山田:オタク的なことは日本社会では許容されつつあります。経済的な条件は合わなくても、趣味で意気投合して健康であれば、地方だったらそれなりの暮らしはできる。若い人の間にそういうカップルが増えているような印象を受けます。

日本人が思うほど日本は裕福ではない

植草:外国人が今後ますます増えると思いますが、国際結婚は増えるとお思われますか? そうなったら状況が変わるのではないかと思うのですが。

山田:日本人女性が海外にいって国際結婚するケースは増えていますが、日本国内での国際結婚は減っているんですよ。というのも、日本の経済力が落ちているから。シンガポールの生活水準は日本の2倍、香港は1.5倍、台湾も日本より上と言われています。

中高年世代は、日本がアジアでいちばんと思っているかもしれませんが、海外での認識はそんなことはありません。ある地方都市に暮らす日本人男性と結婚した中国・上海出身の女性に「日本に来てどうですか」と聞いたら、「田舎」と言っていました。「日本は六本木のようなところばかりだと思っていたのに、こんな田舎があるのか」と。

つまり、外国人にとって日本は第1選択肢ではなく、生活水準の高い人は来なくなってきている。ですから、外国から来て働く人はある程度増えるとは思いますけど、それで結婚が増えるとは考えにくいと思います。

植草:なるほど。ではまた少し論点が変わるんですが、私は結婚したいという女性に対して「まず生活に必要な条件を優先的に考えて、夫婦の絆は結婚した後から築いていければいいんじゃないですか」とアドバイスしていますが、それについてはどう思われますか?

山田:他人から後ろ指差されないような生活をすることが第1、親密性は結婚に求めなくてもいいのではないか、という考えは確かにありますね。とくに前近代社会はそうでした。

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