駅伝に学ぶ、最終的に勝つための“継走術” 「駅伝力」を仕事に生かせ!

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昨年末に行われた全国高校駅伝でも「駅伝力」が勝負を分けた。男子は最終7区で4校によるアンカー決戦になった。3年生がひとり、2年生がひとり、1年生がふたりという組み合わせで、その中で集団の前に出なかったのが、最上級生の西山令(山梨学院大附属)だった。前年に7区で区間賞を獲得している実力者の西山だが、今回は勝負に徹した。集団でレースを進める場合、先頭を引っ張ると、風の抵抗を受けるため疲労度も大きくなる。そのため一度も前に出なかったのだ。

陸上トラックに入り、残り400mを切っても、すぐには仕掛けない。自分の得意ゾーンに入るまではひたすら我慢した。そして残り約200mで猛スパート。2年連続となる区間賞は逃したが、チーム初となる全国優勝を決めたのだ。もし、西山が「空気を読む」タイプだったらどうだろう。最上級生だからといって序盤から集団を引っ張った揚げ句、最後に年下選手に先着されていたかもしれない。

駅伝は個人レースとは異なり、チームスポーツだ。自分だけが満足するのではなく、チームのためにどんな行動をとるべきなのか。それを実践できているチームが“勝利”を飾ることができる。また、トップ選手たちが出場する駅伝レースでは、おのおのが「設定タイム」を決めて、本番に臨むことがほとんど。しかし、当日の天候(向い風になった場合など)や、レース展開によっては、当初設定したペースで走るのは難しい。監督(上司)の指示だけでなく、自分自身で判断する力も必要になってくる。それもビジネスシーンと似ているだろう。

「駅伝力」を仕事につなげる

筆者は雑誌などに記事を寄稿することで、収入を得ている。そのサイクルの中でも、多くの「タスキリレー」が存在する。自分が書いた記事が書店やコンビニに並ぶまで、実に多くの人間がかかわっているが、その“流れ”を最後まで実感することはまずない。ほとんどのビジネスパーソンが、自分の区間だけを頑張って、次のランナーにタスキを託しておしまい、という状況ではないだろうか。ビジネスの観点で言うと、中間がいくらよくても、最終的な目標に到達しなければ、途中の頑張りはあまり意味がない。だからこそ、「駅伝力」を磨いてほしいと思う。

最近、筆者は中学校時代の同級生たちと、地元の駅伝レースに出場した。アラフォーで構成されたメンバーは、決して速いとはいえない。一緒に走ったメンバーの大半は数カ月前から走り出したビギナーが中心だ。それでも、「前の走者が見えたとき、なんだか無性にうれしくなってテンションが上がったよ。箱根駅伝みたいや~なんてね。ただ、走り出した瞬間、われに返ったけど(笑)」というAさんや、「次の走者が見えたときに約25年ぶりの興奮と、負けたくない意地が自然と出たよ」というBさんなど、皆が駅伝の醍醐味を体感したようだった。そして、彼らに「駅伝が仕事につながるか?」という質問を投げかけたところ、さまざまな答えが返ってきた。長年、駅伝をやってきた筆者でも気づかなかったこともあり、ビジネスの参考になると思うのでまとめてみた。

まず、駅伝は「チーム力」を高めるよい方法であるということ。日常の職場での共同作業では、誰か力を抜いていたとしても、乗り切れてしまうことも多い。しかし、失敗が許されない本番の「駅伝」では、ひとりが走ることをやめてしまえば、レースは「途中棄権」になってしまう。ひとりのブレーキ(体調管理の失敗、戦略上のミス、全力を出し切れなかったなど)が原因で、目標順位に届かないこともある。自分のためだけでなく、チームのための最高のパフォーマンスを発揮するための努力をしないといけない。

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