リブラ協会が発行を計画しているデジタル通貨「リブラ(Libra)」が注目を集めている。リブラ協会はフェイスブックが中心となって活動を始めたが、VISAやPayPal、eBay、Uberなどといった著名な企業が設立メンバーとして参加している。
協会のWEBでは、リブラの使命は「シンプルなグローバル通貨と数十億人に力を与える金融インフラを提供することだ」と述べている。
発展途上国の国民や低所得者を中心に、世界では多くの人が銀行に預金口座を開設することができず、金融サービスの利用に低所得者ほど高い手数料を支払わされている。そうした現状を変えようというのだ。
(注)以下、リブラに関する説明は基本的にリブラ協会の日本語ページ(languageで日本語を選択)から引用しているが、意味が分かりにくい場合には英語のページを参照して表現を変えている
通貨バスケットを採用し準備資産を保有
リブラ協会があげているリブラの特徴は、以下の3点だ。
1.安全で、スケーラブル(取引量増大や機能拡張に対応可能)で、信頼性の高いブロックチェーンを基盤とする
2.準備資産による裏付けによって実体のある価値を付与する
3.エコシステムの発展を目指す独立したリブラ協会が運営する
ビットコインで使われているブロックチェーンの技術を使った取引には、取引の検証作業に誰もが自由に参加できるパブリック型(開放)型と、限られたメンバーだけが参加できるコンソーシアム(閉鎖、private)型がある。リブラは、ます創設メンバーだけが検証作業を行うコンソーシアム型として出発するが、数年の間にパブリック型に移行することを目指しているという。
一般にパブリック型は取引の検証に時間を要し、コンソーシアム型のほうが高速で大量の取引を処理することが可能だとされている。技術の改良によってパブリック型でも高速で大量の取引を処理できるようになるのかは不明で、少なくとも現時点では技術的に困難なようだ。リブラが目指しているようなパブリック型への移行が実現できるかどうかは分からない。
リブラだけでなく暗号資産全般に、マネーロンダリングやテロ資金の供給に使われるのではないかという懸念が持たれている。ブロックチェーンでは過去の取引がすべて開示されているため、暗号資産が盗まれても追跡可能であるなどから、犯罪に使うことはできないといわれていた時期もある。
しかし、実際にはダークウェブで交換されるなどして、盗まれたものとは知らない人が受け取ってしまうことが起こっていて、こうした暗号資産を被害者が取り戻すことは難しい。リブラがグローバルな取引に活用される通貨になるためには、こうした問題への対処も大きな課題となるだろう。
ビットコインやイーサリアムは厳格なルールに基づいて発行量を制御することで価値を維持しようと考えているが、リブラは価値の裏付けとなる準備資産を保有することで安定した価値を維持しようと考えている。
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