銃乱射続いても「銃規制」できぬアメリカの病巣 銃規制反対グループが擁する構造的強み
8月3日にアメリカ・テキサス州エルパソで、4日にはオハイオ州デイトンで銃乱射事件が起きた。これに至るまでの1年間で、アメリカの銃規制の議論はたしかに変化してきた。銃規制の推進者が力をつけ、銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)が内紛で混乱しているのだ。
主な銃規制団体は、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグら支援者からの資金や、全米の草の根のネットワークからの支援を得て勢いを加速している。民主党が優勢な州では新法を成立させており、下院では25年ぶりに、大幅な銃規制法案が可決された。
年間数百の銃乱射事件が起きている
しかし、銃規制に反対するグループには構造的な強みがある。それは数十年かけて築かれたもので、ドナルド・トランプ大統領や議会共和党がそれを擁護している。例えば、NRAの予算はブルームバーグの寄付額さえ少額に感じられる規模だし、共和党が多数を占める上院では銃規制法案を審議する様子すらないし、さらにはNRAの姿勢を心強く思っている多数の有権者もいる。
全体としては、1994年に共和党が議会で優位に立った時点と比較すると、かなり両者の力が均衡してきている。とはいえ、エルパソとデイトンの銃乱射事件の直後でも、民主党の要求以上の、さらなる銃規制につながるような兆候はほとんど見られない。
アメリカでは1年間に数百もの銃乱射事件が起きているが、ほとんどの事件が注目を集めず、わずかな変化すらもたらさない。そして、銃規制の法案が作成された場合でも、NRAやその仲間の政治家たちがおおむねそれを退ける。
8月4日には、活動家や主な大統領候補も含めた民主党員たちが上院に対して、2月に下院を通過した銃規制法案に関して行動を起こすよう、これまでと同様の要求を繰り返した。2月の法案では、銃の購入者全員に身元の確認を求めている。