銃乱射続いても「銃規制」できぬアメリカの病巣 銃規制反対グループが擁する構造的強み
8月3日と4日の乱射事件を経ても、共和党の銃規制法案への反対が和らぐ兆しは見えなかった。フォックス・ニュースに出演した共和党下院トップのケビン・マカシーとダン・パトリックは、銃乱射事件が多発しているのはビデオゲームのせいだとした。NRAも長年、ゲームに責任を負わせようとしている。パトリックは、「ゲーム業界が若者に殺すことを教えている」と述べた。
暴力的なビデオゲームはアメリカ以外にも一般的に存在する。しかし、アメリカほどの規模で銃乱射事件が起こっている国はほかにない。また、アメリカほど多くの銃を保持している国もほかにない。2018年の調査によると、アメリカには3億9300万丁の銃があると推測されている。人口よりも多い数の銃があることになる。
終わらないNRAの混乱
過去の大統領選挙とは違い、2020年の民主党の候補者は、全員が全面的な身元確認やほかの規制を支持している。それ以上を求める候補者も多い。
銃規制の議論をさらに複雑にしているのが、NRAの混乱だ。財務不正疑惑やその捜査、内輪もめ、ロシアに狙われていたことが発覚するなど、さまざまな問題に見舞われている。
今年4月には、NRAで長期にわたってCEOを務めているウェイン・ラピエールとの権力争いにより、前会長のオリバー・ノースがNRAを離れることとなった。それに対してトランプ大統領が、「内輪もめはやめて、偉大な団体に戻ってくれ。早く!」と要請するほどだった。しかし混乱は続き、NRAのトップのロビイストでドナルド・トランプ・ジュニアの友人でもあるクリストファー・W・コックスが、6月に辞任を強いられた。
それでもNRAは、どんな銃規制グループの予算も少額に見えるほどの巨額の予算を持っており、手ごわい存在であることに変わりはない。しかし、より穏健な立場をとろうとする様子もない。
エルパソの銃乱射事件から30時間の沈黙の後、NRAは声明を発表し、エルパソとデイトンの犠牲者に対して、「深い哀悼の意」を表明した。
「われわれはこれらの悲劇の政治利用に加わることはしない」と、NRA広報担当のアンドリュー・アルラナンダムは述べた。「こうした恐るべき行動をとる人間から、すべての人々を守るため、真の解決方法を探るべく引き続き誠実に取り組む」。
(執筆:Reid J. Epstein、Maggie Astor、Danny Hakim、翻訳:東方雅美)
© 2019 New York Times News Service
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら