夏バテなのに「キノコ」「ワカメ」を欲しがる理由 健康志向で脚光を浴びるのは、この3社

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ただし、ここ数年、需要増加に国内のワカメ収穫量が追いつかない異常事態が発生し、原料価格上昇という厳しい事業環境が続いている。国内でワカメの主要な産地と言えば、その7割が「三陸ワカメ」と称される、岩手県や宮城県の沿岸だ。

収穫される肉厚のワカメに関わる漁業関係者は、東日本大震災で打撃を受けた。国内収穫量を見ると、大震災が起きた2011年の落ち込みの大きさがわかる。あれから8年が経ったが、ワカメ漁業関係者の高齢化と後継者不足は、深刻さの度合いが増している。

理研ビタミンの黒川大成・海藻事業推進室長は「冷凍の三陸産丸採りワカメはアマゾンに出品しており、家庭用の需要でも手応えを感じる」と力を込める。もっとも2019年は海水温の上昇で、三陸産は収穫期の春先に不作となる事態に陥った。

国内で消費されるワカメの市場規模は、もともと年間400億~470億円で推移しており、30年間も大きくは拡大しない。うち国内生産の比率は2018年数量ベースで約16%にすぎず、中国からの輸入で同71%、残り13%は韓国からの輸入で占められている。

産地判別の認証マークで食の安全も訴え

大震災時でも輸入品を拡大して対応したが、実際、輸入品には環境問題や採算性で難がある。理研ビタミンでは「ふえるわかめちゃん」に産地判別検査合格の認証マークを使用し、食の安全に関心が高い消費者に応える品質保証体制を強化した。

ワカメ事業のリーディングカンパニーを自負する理研ビタミンは「収穫量が減ってしまうと原料高は続く」(黒川氏)という危機感を抱く。手をこまねいてはいられないと、供給の安定化に向けた国内プロジェクトを立ち上げた。

種をつくって生産量を拡大すべく、宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区には基礎研究施設を2年前に設立。官民協働で早生、晩生の優良種苗の開発に挑む。並行して三陸以外の鳴門、瀬戸内、北海道のワカメ生産地のブランド育成による、ワカメ漁業の活性化にも取り組んでいる。

ホクトと雪国まいたけは不需要期の夏場にかけ、抑え気味の価格を打破しようと、マイタケブームにあやかろうとする。理研ビタミンは養殖の生産性向上プロジェクトを立ち上げ、急速冷凍製品を中・外食市場に売り込む。消費者の健康志向の高まりを味方につけ、キノコ・ワカメの主要3社は厳しい市場環境をはねのけようと必死だ。

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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