ベンチャーキャピタルがデザイナーを雇う時代へ
出井:僕は今、「デザイン」の会社をイタリア・ミラノと東京で作っている。だから、伊佐山さんのWiLとつなぐと、日本、欧州、アメリカとグローバルでコラボレーションできる。面白いよね。
伊佐山:それはいいですね。現在、スタートアップの世界でも、「デザイン」の重要性は増してきています。シリコンバレーの有名ベンチャーキャピタルであるクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイチャーズ(KPCB)は最近、デザインパートナーとして有名な日系の工業デザイナーを雇いました。
これまでの価値観だったら、「なぜ、金融会社がデザイナーを?」と疑問に思うかもしれません。ただ、IT(情報技術)の世界も“技術力”の時代から“インターフェース”の時代へと変化しています。その中では「デザイン勝負」になるわけです。
これまでは、IT系スタートアップは、無骨でもテクノロジーがすばらしければいい時代でした。ただ、米アップルがiPhoneをはじめ、極端に洗練された事例をつくったことで、それらがデフォルト(標準)やベンチマークになる。これからは、スタートアップも初めからデザインを意識しなければ、多くの人から受け入れられない。
だから、WiLのチームも、金融業界やコンサルタント業界からではなく、事業経験者や、クリエーティブなバックグラウンドを持つ人間を集めています。2人で行った、シリコンバレーにある世界最高のデザインファームと言われているIDEOなんか面白かったですよね。
出井:若い人には、ソニーの創業者・井深大さん、盛田昭夫さん、パナソニック創業者・松下幸之助さん、ホンダの創業者・本田宗一郎さんのような経営者を目指してもらいたいですね。今、僕はレノボ・グループ本社の社外取締役をしているが、同社の創業者の柳伝志さんは、おそらく松下幸之助さんのような経営者。アジアにもワクワクする、スタートアップマインドを持った経営者が多くいる。
伊佐山:ソフトバンクの孫正義CEOみたいな、まともな経営者からすると「危なくて何やっているんだろう」という人が、若い人からするとワクワクする。それこそボーダフォンを買収するときに、1兆円の営業利益を出す企業になるとは誰も思っていなかったと思います。むしろ、1兆円損をする企業だと思われていました。「大企業×ベンチャー」「熟練CEO×若手CEO」、こうしたかけ算がおきて、孫さんだけでなく、さまざまなワクワクする経営者が出てきてほしいですね。
出井:そうだね。そうすれば、日本も間違いなく、変わるね。
(構成:山本 智之 撮影:梅谷 秀司)
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