「機会」をつくれれば、日本は変わる
出井:また、日本では、「熟練CEO」と「若手CEO」の出会いがないのも問題だね。日本の経営者はまるで“たこつぼ”に入っているかのよう。年に1回、たこつぼから出るのが「株主総会」。だから、自然の声など耳に入らない状態になる。それが日本の経営を弱くしている。
伊佐山:確かに、日本最大級のベンチャーカンファレンスである「IVS」でさえ、出井さんは登壇しましたが、大企業の経営者が登壇することはまだ少ない。だから、そもそも“接点”がないという状況です。ベンチャー企業は新聞や雑誌といったメディアで知ればよくて、「実際に会って議論の場に」とまではなっていない気がしますね。
出井:「では、若い人が積極的にアプローチすればいい」という意見もあると思う。ただ、大企業の経営者――たとえば、日本の財閥系などの大企業の社長、会長――は、僕でさえ、簡単に会食に誘えない。日本の大企業の経営者は、周りに社長室長および社長室軍団が“すごい壁”を作っている。大げさに聞こえるかもしれないけど、本当にそう。デートの事前準備のように、秘書が事前に下見に行くことさえあるくらいだよ(笑)。
僕でもできないのに、若い人であればなおさら難しいだろう。だけど、経営者が若い人と会うことを敬遠しているか――というと、必ずしもそうではない。むしろ、会って刺激を受けたいという人が多いはず。だから、そういう機会をうまく作れば変わっていくと思う。それこそWiLの出番だ。
伊佐山:今回、WiLを支援してくださる大企業10社以上の経営者とはすべてお会いしました。直接、話させていただくと、「新しいイノベーションの発想だ」と評価いただき、信頼してもらえた。いかにこうした機会を作れるか――というのを、今回は出井さんだったり、身内であったり、周りにいる異なる年齢層の方から支援してもらって、ここまで来ることができた。これらを全部、自分でやろうとしたら、10社以上から出資してもらってファンドを組成するという「発想」は出てこなかっただろうし、仮に発想はできたとしても「実現」は難しかっただろうと思います。
ただ一方で、若い人も「大企業はもうダメだ」「付き合っても意味がない」と、メディアの情報を鵜呑みにしてネガティブなステレオタイプ(固定観念)にとらわれるのもよくないと思いますね。
出井:そもそもの前提として、日本人は100%成功しなければと思いすぎだと思いますね。「リスクなしにバッターボックスに立てるのか」という話だと思う。特に、大企業ではバッターボックスに立たない人、つまり会社の命令にそのまま従う人のほうが偉くなる可能性が高い(笑)。だからこそ、「大企業×ベンチャー」「熟練CEO×若手CEO」といった新しい取り組みをどんどん成功させなければならないと思うね。
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