伊佐山:一方、日本では、まだそういう経営スタイルを採っている企業は皆無に近い。グリーや楽天を始め、いまだ多くのIT企業ではファウンダーががそのままCEOです。もちろん若い人中心のチームも「いい面」はあり、必ずしも否定するわけではありませんが、層を広げるためには「混成チーム」がもっとあっていいと思っています。
出井:そうだね。ただ、熟練のCEOやビジネスパーソン側も気をつけなければいけない。かつての成功体験をそのまま持ち込むことをしてはいけない。それはただの「老害」。たとえば「ソニーではこうだった、ああだった」というのは迷惑になるだけです。その企業のためのマネジメントができる人だけが成功しているというのをこの目で見ている。
いちばん注目している経営者はヤフーの宮坂氏
出井:僕が今、注目して見ている経営者は、ヤフーの宮坂学社長。僕はこれまで、「ルールブレーカーたれ」と言ってきた。つまり、これからは「自ら変革していく力」が重要だと。そういう意味で彼がやっていることは正しい。
彼は創業から増収増益を続けた会社を引き継いだ。これまで率いてきた井上雅博氏が、周囲の人が「やり尽くしたのではないか」と思うような後でも、「爆速経営」という言葉を生み出し、変化させている。「10倍挑戦して、5倍失敗して、2倍成功する」と、新しいことを始める経営層の意欲、パワーがあふれていて、すごいね。
伊佐山:若返りが必要――、それは間違いありません。日本はヤフーをはじめ、企業の中には変化が進んでいるところもありますが、全体としてはまだ遅い印象を受けます。アメリカをみると、大企業をはじめ、30~40代のCEOが出てきて、どんどん若返っています。それに、HPやペプシコ、IBM、GM、ヤフーなど、女性のCEOが増えている。「若いからいい」というわけではなく、半分は、若い人に“いい経営者”になるために経験を積ませたいという教育的な要素もあると思います。それが、社会の新陳代謝がスピードアップする要因になっています。
ただ、こうした言い方をすると、「シニアをないがしろにする」と受け取る人がいますが、そうではありません。むしろ、若返りの過程の中で、ご意見番的に頼れるCEO経験者が身近にいてくれて、ある意味の距離感を保ちながら支援していければ、それがいちばん望ましいと思います。だから、若返りで経営のスピードアップさせることとシニアにも活躍する場をつくることが、車の両輪となるよう目指すべきです。
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