医師も知らない実は間違っている「医療神話」10 魚油では心臓病リスクを軽減できない
■魚油は心臓病のリスクを軽減しない
魚油が心疾患を予防するという考えは理にかなっていると考えられていた。脂肪性の魚を多く食べる人は、心臓病を発症するリスクが低いとされる。脂肪性の魚にはオメガ3脂肪酸が含まれる。オメガ3脂肪酸の補給剤は、値が高いと心疾患のリスクが増すというトリグリセド(中性脂肪)の値を低下させる。オメガ3脂肪酸はまた、心臓発作の主要な発生要因である炎症を抑制するとみられる。
しかし、心疾患のリスクがある1万2500人が参加した臨床実験では、オメガ3脂肪酸の補給剤を摂取しても心臓病の予防にはならないことがわかった。
イチョウの葉に記憶力を維持する効果はない
■本物の赤ちゃんのような人形は10代の妊娠を抑制しない
泣き声をあげ、オムツを替えたり抱っこしてあげたりする必要のある人形を使うことで、育児の大変さを知り、10代での妊娠を抑制するという考え方がある。しかし、ある無作為調査では「乳児シミュレーター」を使うよう指示された少女たちは、それを使わなかった少女たちよりも妊娠する確率がわずかに高かった。
■イチョウ葉は記憶力低下や認知症を予防しない
イチョウ葉のエキスは古来の漢方薬で広く使用され、現在でも記憶力を維持させるとして推奨されている。2008年に発表されたアメリカ政府による大規模な研究で、イチョウ葉のサプリメントには記憶力を維持する効果はないことが明確に示された。しかし、イチョウ葉サプリメントの市場規模は2億4900万ドル(約270億円)に上る。
■激しい痛みを抱える救急患者の治療には、オピオイドの投与1回はアスピリンやイブプロフェンの投与と効果に差はない
確かにオピオイドは強力な薬品だ。しかし、ある臨床試験では、救急の患者に対してはオピオイドよりはるかに安全な代替薬がオピオイドと同等に痛みを鎮静した。
■テストステロン値を高めても高齢男性の記憶力維持に効果はない
記憶力の問題がある男性の中には、テストステロン値が低い人もいる。初期の研究では、テストステロン値が高い中高年の男性は脳の一部の組織の状態がいいとみられた。テストステロン値が高い高齢男性も、精神状態を調べる試験の結果がより優れているとされた。
しかし、高齢男性の物忘れに対するテストステロンの効果は偽薬と同レベルであることが、厳密な臨床試験で明らかになっている。