(第7回)これからのお母さん・お父さん・子ども[編集部インタビュー]

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--これからのお父さん、お母さんの消費はどのようになると考えますか。

(大沼・F)2007年は単独世帯数が標準世帯、いわゆる子どもと親の世帯を抜いたという年でもあります。絶対数が減少していく一方で、子どもを持つということやファミリーの幸せということがますます貴重になってきていて、家族や子どもを自分のひとつのアイデンティティとしていく流れは一層強くなっていくと思います。少子化の中でもキッズマーケットが伸長しているように、父親は単にカバーしておけばよい時代から、その理解力が問われる時代になるでしょう。 そういった意味で、これまで性別や年代といったくくりでの「個」の消費やライフスタイルの提案は数多くなされてきましたが、家族や夫婦といった「ユニット」での消費の提案やツールは不足しています。家族を考えると、子どもをフックとして、家族を結びつける機会をいかにつくるか、夫婦で考えると、二人の時間ということにもっと焦点を当て、自然体で向き合えるような機会をどう作り出すかとか。ユニットをどう捉えていくかということが、重要になるのではないでしょうか。 また、長期的には父親の働き方が変わっていくと思います。ワークライフバランスということが市民権を得てきていて、今後、父親の時間が家庭に還元されることで、平日・休日という時間の概念、在宅を前提とした空間のあり方、父親同士のコミュニティ力など、様々な分野で従来の発想を転換する契機になると思います。

(堀井・F)多分、父親が中性化しているのだと思います。今まで母親がやっていた役割を父親がやるようになってきていて、父性と母性の境目がなくなってきているのです。「中性としての父性」が父親の消費を捉えるひとつの切り口になるかもしれません。 夫婦単位や家族そろっての消費は伸びていくと思います。仮にそれを「表消費」とすると、プライベートの「裏消費」というのがあるわけです。今のお父さんは、さまざまな側面のバランスをとってマネージしていける世代なので、会社の顔、家族の顔、自分自身の顔、いずれも捨てません。したがって、「表消費」と共に、「裏消費」も増えていき、消費スタイルは細分化していくと思います。

(伊東・M)母親が子育てをしながら働く環境はずいぶん良くなってきています。この傾向はさらに進むと思います。父親も、子育てにもっと参画してくるでしょう。
 でも、子育ての環境が良くなったといっても、まだ十分に行き渡っているわけではありません。お母さんたちには、もっと子どもを預けやすいところが欲しいとか、子どもと一緒に遊べる場所が欲しいというように、さまざまな欲求がありますので、これらが満たされるような形で消費シーンは動いていくと思います。

(谷津・M)私が初めて産休をとった5年前と今とを比べて、例えば子どもを連れて出かけることひとつについても、ハード面でもソフト面でも大きく変わったと思います。メディアの扱いも、子育てに関する記事や特集などが非常に増えています。日本の社会全体の意識が急激に動いていると実感しています。
 ユニットでの消費ということに関しても、最近の新しいスポットの中では、東京ミッドタウンの中にも大人用の雑貨とベビー服を一緒に置いているお店があったり、豊洲のアーバンドックららぽーとでもお母さんと子ども服の両方を扱っているお店が数多く入っているというようなケースがよく見られます。

(大沼・F)一緒のモノ、一緒の過ごし方ということで、家族に門戸を開くという流れは確実にあります。いわゆるハイブランドでも子ども向けのラインを広げたり、都心のホテルが子どもにもプールを開放したり、六本木ヒルズでもお子様ランチマップを用意していたり、家族を遠ざけていた現場に、子どもを巻き込むことで、新たな顧客層としての家族を取り込んでいく流れが主流になっています。

(堀井・F)子どもの世界に大人が合わせるのではなく、大人の世界に子どもが合わせるような家族の時間の楽しみ方が増えていくと思います。ベビーカーで入りやすい店も増えていて、自分もちゃんと楽しむし、子どもも楽しめるようにする。子どものために自分を犠牲にしない、そういう時代になっていきているんじゃないでしょうか。

マッキャンエリクソン「Real Mothers リアルマザーズ」
マッキャンエリクソンの独自調査システム、マッキャン・パルスなどから、今日の母親の思考、感情、ディマンドを探り、彼女たちのリアルな姿をあぶりだすことを目的としたプロジェクト。
2004年から毎年、調査結果を小冊子にまとめて公表しています。
http://www.mccann.co.jp/insights/realmothers/about.html

マッキャンエリクソン「Real Fathers リアルファザーズ」
家庭の中の「父親」に焦点を当て、その実態や欲求などを分析。2007年の創刊号では父親の中でも、特に子どもとの関係が微妙に変化しはじめる「小学生の子どもを持つお父さん」に焦点を絞り、独自調査をもとに時代・世代・加齢の3つの観点、本人・妻・子どもの3つのアングルから「お父さん」像を分析。分析に当たっては絵や写真などを活用することで家族と父親の関係や心理を視覚化するという方法をとると共に、お父さんの「消費を喚起するドライバー」を探り当てることで、実際のビジネスへの活用を意識している。
(株)マッキャンエリクソン「Real Mothers リアルマザーズ」編集部

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