「リアルマザーズ&ファザーズ」と題して6回にわたり、いまどきのお母さん、お父さんの実態を分析してきた。この分析レポートは、大手国際広告会社・マッキャンエリクソン発行の「Real Mothers リアルマザーズ」誌、「Real Fathers リアルファザーズ」誌による調査がもととなっている。今回は、両誌の編集部員にいまどきのお母さん、お父さんから受ける印象と、今後の消費の方向性を中心に話を聞いた。
(聞き手:東洋経済オンラインマガジン編集部)
--「Real Mothers」誌、「Real Fathers」誌発刊プロジェクトの経緯を教えてください。
(谷津・Real Mothers担当、以下M)1号を発行したのは2004年です。私が2002年に産休から復帰し、母親をターゲットとしたブランドやプロダクトをプランナーとして担当する機会が増えた際に、母親に関するインサイトが実情を反映していないものではないかと違和感を覚えました。当時、社内も含めて広告開発や得意先の担当者の多くは、20~30年前の母親のイメージをひきずったまま、お母さん、主婦をひとくくりにしていて、今の母親というものを正確に捉えていないことに気づいたのです。弊社のお得意先には、母親や主婦をターゲットにしている所も多いので、彼女達のインサイトの実情を、きちんとまとめていこうということがスタートの経緯です。
(大沼・Real Fathers担当、以下F)従来、家庭の消費といえば、「主婦」や「母親」に焦点があたっていて、「父親」は脇役と考えられてきました。父親は仕事が人格、外で稼ぐことが役割、家庭内のことはすべて母親が担っているので、一部の耐久財を除いては意思決定者である母親を押さえればよいという考え方が、マーケティング上の主流でした。しかし、近年では男性の消費への注目も高まり、新人類と呼ばれた世代が親となって、ファミリー層を対象とするカテゴリーにおいても購買の重要なターゲットとして父親の視点が不可欠になりつつあります。このような状況を踏まえて、旧来とは異なる兆しを見せる新しい父親層に着目し、父親像の変遷、父親達の生態、消費実態など、いまどきの父親の本当の姿を探るプロジェクトを昨年立ち上げました。第一号では、ボリュームゾーンであり、かつ家族との関わりが最も活発化し、同時に悩みも抱える小学生の子供を持つ父親にフォーカスを当てています。
--いまどきのお母さんについてどんな印象を受けましたか。
(伊東・M)20~30年前のお母さんというと、家庭のため子どものために自分を犠牲にするような人たちだったと思います。いまどきのお母さんというのは、自分というものがしっかりあって、もちろん家族も大事にしているけど自分も大事で、その両立がうまくできるようになってきています。
(谷津・M)今までは主婦とか母とかでひとくくりにされてきましたが、調査をしてみるとそんなに単純ではなく、いろんなタイプに分けられることがわかりました。本誌では「セレブ・ママ」「ミーハー・ママ」「ナチュラル・ママ」「やりくりママ」「脱力ママ」の5つに分類しました。
メディア接触についてもタイプによってまったく違います。つまり、広告に関しても、メディアに関しても、これらの違いを理解した上で戦略を立てて行かなくては動かせる人たちではなくなってきています。
--いまどきのお父さんの方はどんな印象を受けましたか。
(大沼・F)母親は家庭に軸足を置いて、その中でも様々な顔を持っていますが、父親というのは物理的にも家族と過ごす時間が限られ、子どもともコミュニケーションが圧倒的に不足しています。子どものことは母親に任せることが多く、それゆえ、夫婦間でのパワーバランスがだんだん弱まってきていて、家族の中でうまくポジションを作れず窮屈だったり、自信がなかったり。結果としてお父さん自身が自分の殻に閉じこもってしまうという現状があります。
一方で社会全体を見てみると、日常の生活の中にも楽しみを見出すとか、物理的ではなく精神的なことに価値を重視するといったような大きな流れがあります。父親にとってこれまで家庭は奉仕する対象でしたが、もっと自分自身が積極的に関与して、肩肘を張らないエンターテイメントの対象になりえるのではないかと思います。
こうした新しい流れを踏まえて、リアルファザーズでは父親と家族の新しい関係をつくるためのアイディアとして“お父さんをエンターテイナーに”という提案をしています。父親だからこそ子どもにできること、夫婦だからこそ向き合えること、自分を捨てずに家族も楽しめることを日常の中で演出する、それは、父親にどうやって自信をもたせるか?という問いへの答えでもあります。
(堀井・F)昔は雷おやじのような怖いお父さんがいましたけど、今のお父さんはみんなやさしいんです。家庭でも、会社でもやさしくておとなしくて強い自己主張をしない。自信もなくて優柔不断という側面も見え隠れしますが、会社、家庭、自分自身どれもきちんと大切にしていて、バランス感覚が優れています。そのさまざまな側面をどうバランスよく楽しめるように後押ししてあげるかが大事だと思います。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ライフの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら