古都・鎌倉に若手起業家が続々移住するワケ 小泉今日子主演ドラマ成功の影にもブランド戦略

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これは特に、「旧鎌」(鎌倉駅周辺)と呼ばれる鎌倉駅周辺の地域で起きている現象です。人口が増えることは、その反面、「ゆとりある住環境が崩れる」との側面もありますので、行政としては注意して見守っています。

――鎌倉といえば、かつては「定年後に住みたい街」のランキング上位でした。最近も住まいを移されるのは、会社勤めを終えた方、いわゆる“リタイア組”が多いのですか?

実は、近年の傾向としては、高齢者が転入してくるよりも、転出するほうが多いのです。かつてのように、「老後に鎌倉に住む」というようなニーズは、あまりないと思います。

鎌倉市の松尾市長

一方で、若い人ほど「鎌倉に住みたい」との意識が強くなっています。民間企業の調査によると、20代で「住みたい街」のトップに鎌倉がランクインされました。最初は、私も意外でした。

「旧鎌」で、大きな敷地跡の住宅に入居されるのは、子どもがいる若い世代が多いですね。この10年ぐらいで、「旧鎌」にある小学校は児童数がグンと増えています。

また今、鎌倉では、IT系などのベンチャー企業が集積しつつあります。感性が豊かな若い経営者や従業員が、「鎌倉に住みたい」「仕事をしたい」と考えておられるようで、そういった方の移住も増加傾向にあります。

反対を押し切って、ドラマ撮影に全面協力

――若い人からの支持が高まっている背景には、人気テレビドラマ「最後から二番目の恋」(2012年1月~3月放送、小泉今日子、中井貴一主演)の影響もあるのではないでしょうか。なにせ、ドラマの中では鎌倉が全面的にフィーチャーされていましたから。

そうですね、ドラマの放送は影響がありました。番組のディレクターが鎌倉のことが好きで、また主演の小泉今日子さんも神奈川県内に住んでおられるようで、出演者や製作スタッフの方々の中に「ドラマを通じて、鎌倉の魅力を伝えていきたい」との気持ちがおありだったようです。「最後から二番目の恋」では、市役所を使う撮影もすべてOKして、全面的に協力をしました。街のPRになる、との考えからです。

実はこれまで、鎌倉市役所はドラマなどのご協力をいっさい断っていました。「ひとつの民間企業に肩入れするには理由が必要ではないか」、というような反対意見が職員からたくさん出ることに配慮していたのです。ドラマの内容などを吟味して、それが鎌倉の価値を高めるようなものならば協力すればよいものを、民間企業との付き合い方がわからないというか、リスクをとらない体質があったのだと思います。

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