「カジノの日本上陸」が不安な人が知るべき事実 「IR」の主役は実は別のところにある

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日本には優れた観光資源が至る所に広がっています。1つの例が、年間を通して各地で開催される地域のお祭りです。

こうしたイベントは、観光客の満足度を高めるために非常に魅力的なコンテンツであり、価値あるものです。さらにいえば、世界的に人気を呼んでいる日本食も強力な誘客資源です。事実、日本の食を堪能するためだけに訪日する旅行者もいるほどです。日本食の魅力を活用しながらIRへの集客につなげようと思えば、周辺の地域コミュニティーに多種多様な日本食を提供する飲食店がある環境は歓迎すべきなのです。

働き方改革を進める日本社会にとっても有意義

――外資だからこそ果たせる役割は、ほかにもありそうですね。

まず単純に雇用市場の多様化への貢献が挙げられます。大阪にIRが導入されたケースを想定し、イギリスの調査・研究機関であるオックスフォード・エコノミクスが算出した試算では、2万6000人の直接雇用が生まれ、5万1500人の間接的な雇用創出効果があると見られています。

MGMは、この雇用創出を人材市場の需給をさらに逼迫させるものとしてではなく、むしろ雇用の「多様化」によって地域に貢献するものとしたいと考えています。

その多様化=ダイバーシティー推進に特化する部署もあります。世界が急速に変化していくなかで、同じような経歴やスキルの人たちばかりで占められている組織は、いつしか柔軟さを失い、行き詰まっていきます。これでは将来は望めません。それを避けるには、異なる感性や経験を持つ人々を組織に取り込んでいくことが重要です。

『IR〈統合型リゾート〉で日本が変わる カジノと観光都市の未来』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

日本における多様性は、アメリカのそれとは異なるものも多いでしょう。しかし、例えば管理職における女性の登用を増やすことも、組織の多様化の1例です。こういった観点からのダイバーシティーの理念は、働き方改革を進めつつある日本社会にとっても非常に意味のあるものです。

例えば日本の場合、帰国子女などの外国で長く暮らしたことがある人材も、ダイバーシティーを構成する要素と捉えてもいいのかもしれません。こういう人材は間違いなく組織に多様性をもたらします。

女性の登用にも力を入れています。IRにとって女性の働き手は重要なので、やりがいのある仕事を見つける多くの機会を提供できると思います。働きたくても働くことのできない方々を労働市場に呼び戻し、活性化させていけるはずです。

女性にとってより働きやすく、より活躍できるための具体的な環境整備としては、託児所の設置が真っ先に挙げられます。日本では今、保育園不足が問題になっていますが、従業員が自分の子どもを施設周辺ないし会社主導で設置される託児所に預けることができれば、送り迎えの時間を気にせずに働けるでしょう。MGMで働く父親が子どもをMGMの託児所に預けられれば、他社で働く母親の負担も軽減できるはずです。

野口 孝行 フリーランスライター/翻訳家

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のぐち たかゆき / Takayuki Noguchi

1971年、埼玉県生まれ。メーカー、商社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、2011年に独立。アメリカ・アーカンソー州立大学政治学部卒業。著書に『脱北、逃避行』(文春文庫)。訳書に『外交官の使命 元駐日アメリカ代理大使回顧録』(ジェイソン・ハイランド著・KADOKA WA)などがある。

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