「カジノの日本上陸」が不安な人が知るべき事実 「IR」の主役は実は別のところにある

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正解は③の3%です。

IRが誕生すると、その施設の主要部分はカジノが占めると認識している方は多いかもしれませんが、実際にはカジノが主役なのではありません。

では何がIRの目玉なのでしょうか。先ほども触れましたが、まず数千規模の客室を擁す国際競争力を有したホテルと、大規模なイベントを開催する展示場スペースが入ります。続いて、アリーナや劇場などのエンターテインメント施設、美術館などの文化施設、日本各地への観光を案内するビジターセンターと、ウェルネス関連の施設が多くのスペースを占めることになるでしょう。

特徴的なのは、会議やイベントに使える施設

――こうした施設が統合されていることからIRと呼ばれているのですね。なかでも特徴的なのはどのような施設ですか?

特徴的なのは、MICE施設です。MICEとは、企業などの会議(Meeting)、企業などが行う報奨・研修旅行・インセンティブ旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会などが行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を取ったもので、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントの総称です。

ジェイソン・ハイランド/日本MGMリゾーツ代表執行役員兼社長。カリフォルニア大学卒業後、フレッチャー法律外交大学院にて修士号を取得。東京大学外国人客員研究員などを経て、在日米国大使館臨時代理大使をつとめた。外交官として、国務省東アジア・太平洋局特別補佐官、在オーストラリア米国大使館首席公使、在アゼルバイジャン米国大使館首席公使などを歴任。福岡、大阪、札幌、東京など、15年以上にわたって日本に在住している(写真:著書『IR〈統合型リゾート〉で日本が変わる カジノと観光都市の未来』より)

将来的に日本に導入されるIRには、こういったMICEを誘致できる最新の施設が作られます。

国際会議や展示会、見本市、イベントを行うための大きな会場は、一定程度日本に存在します。しかし、世界のマーケット需要から見ると、収容人数などの規模、さらにはホテルやナイト・エンターテインメントを含めた関連施設が不足しています。

企業の社内イベント1つをとっても、1社で数万人単位の従業員が世界中から集まるようなグローバル企業のインセンティブ・イベントや、世界的な見本市を誘致するには、各分野で規模拡大が必要です。

日本には今、年間3000万人を超える外国人観光客が訪れます。10年前の2009年の訪日外国人数が約679万人だったことを考えると、まさにうなぎのぼりです。この急増を受け、日本は深刻なホテル不足に悩まされています。同時に、あまり報道されていませんが、国際的な会議や展示会を開催するための収容・開催能力も極度に不足しているのです。

ちなみにMGMは、ラスベガス1社で約37万平方メートル(東京ドームの約7.9個分)の広さを誇るMICE施設を運営しています。一方、現時点で日本最大の展示場の面積は9.7万平方メートルです。この比較を見れば、日本におけるスペース不足の度合いがわかっていただけるのではないでしょうか。

次ページ日本にはラスベガスのような場所がない
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