「カジノの日本上陸」が不安な人が知るべき事実 「IR」の主役は実は別のところにある

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さらに基金を設け、ネバダ大学ラスベガス校をはじめ関係各機関に資金提供を行い、依存症に関する調査を行っています。調査と教育の両面からアプローチし、ゲーム・センスを通じて依存症についての公共教育や啓発活動も促進しています。

ただし、このプログラムをそのまま日本に持ち込もうとは考えていません。ギャンブル等依存症は社会全体の問題ですし、日本の文化や社会・家族間の関係などをよく吟味したうえで、日本に適したプログラムに改良する必要があります。そこで私たちは日本の専門家の方々と定期的にお会いし、彼らの意見を聞き取ったうえで、最良の形での導入を検討しています。

日本にもたらすメリットは

――IRに対して懐疑的な人のなかには「外資が参入してきて日本の富を食い尽くす」という考えを持つ人もいます。

外資によるIRが誕生することで、日本から富が流出するという声があるようですね。いかなる企業でも儲けを出す必要があり、IR運営企業も例外ではありません。したがって、できるだけ多くの利益を上げるために尽力するでしょう。ただし、得た利益がすべて本国に流れていくわけではないのです。

IR整備法は、IR運営企業が得た総カジノ収益のうち、3割を納付金として国に支払わなければならないと定めています。この納付金は、国とIRを誘致した地方自治体で等分し、受領できるのです。日本人のゲストに課される6000円のカジノ入場料も、国と地方自治体に振り分けられます。これにより、年間数千億円規模の歳入増が期待できるのです。

また、ホスピタリティー業であるIRは労働集約型ビジネスですから、運営企業が得た利益は株主に還流されるだけではなく、地域と、IRで働く日本の従業員の給与支払いや福利厚生に多くが還元されます。リゾートとしての魅力を維持し続けるためには、大規模な再投資も必要になってくるでしょう。これらはすべて地域に還元される利益です。

シンガポールのIRを見てわかるとおり、IRの導入が決まれば巨大な建造物が誕生します。その建物は、地域にとって貴重な資産となるでしょう。IR施設が建設されれば、多くの観光客を呼び込み、地域経済も活性化されます。IRによって新たなチャンスが生まれ地域全体が発展し、生活もより豊かになり、住みやすくなったという声が出てくれば、プロジェクトは半ば成功と言っていいでしょう。

――IR施設が地域を訪れる観光客をすべて吸い上げてしまうという危惧はありませんか?

それは考えにくいですね。そもそも日本のIRを長期にわたって成功させていくには「日本ファン」を増やしていかねばなりません。そのためにはIRが単独で観光客を呼び寄せるのではなく、地域コミュニティーと協力しながら日本全体の観光資源を武器にして、リピーターを獲得してゆく必要があります。

IRオペレーターは、つねに新しいエンターテインメントやイベントを企画し、提供しますが、それだけでは不十分です。地域コミュニティーと密接に結びつき、一体となって地域全体の魅力を発信していかなければ、お客さまに満足していただくことはできません。なので、IR施設だけが儲かればいいという話ではないのです。

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