37歳の脱サラで「だるま造り」始めた男の仕事観 ブライダル業界経て40前にやり直しを期した
七転び八起きのサラリーマン人生から独立への道
だるま市で透明な袋に入れられ、山積みにされた赤いだるまの張りぼて。あれはどのように作られているのか。
小野里治さん(46歳、記事執筆当時)は10年前、サラリーマン生活を切り上げ、だるま造りの道に入った。群馬県達磨製造協同組合の後継者募集に応募し、8年間も修業、1年半前に群馬県太田市の生家でだるま工房「吉んと」(きちんと)を創業した。
工房を訪ね、小野里さんに話を聞いたが、工房は文字どおり「家内制手工業」の現場だった。自分が生まれ育った生家をそのまま工房に転用。玄関に入ると、床が一段高くなる。そこで靴を脱ぎ、室内に進むのが日本家屋の造りだが、ここでは靴のまま畳敷きの部屋に入る。
3室ほどある屋内には天井まで幅広の置き台が組まれ、その上に大小さまざまなだるまが自然乾燥のため並べられている。色塗り前の白いだるまもあるし、赤色で染められただけで、まだ目鼻が描かれていないだるまもある。玄関寄りが工房の製作コーナーになっていて、製作机の周りには絵筆や絵の具、塗料やバケツなどが置かれている。
机を前にしていすに座り、右手に絵筆を握って、小野里さんが絵付けをする。もちろん左手には顔面をピンク色に下塗りした、だるま像を持っている。筆の運びはパッパッと素早い。もたもたしていると、鋭い線が出ないし、絵の具が顔面を下に流れる恐れもある。そうなったら修復が利かず、オシャカにするしかない。
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