吉野家「超特盛」ヒットを生んだ陰の主役とは P&G出身の「マーケティングプロ」が大活躍
実は、小盛の導入に際して吉野家社内で懸念があった。「並盛を注文している顧客が20円安い小盛に流れたら、粗利が減ってしまう」との心配だ。しかし実際に販売してみると、並盛の注文はほとんど減らなかった。「並盛を注文していた顧客が小盛を食べるようになったことよりも、新しい顧客が来てくれた効果の方が大きかったようだ」と広報担当者は話す。
新たに2サイズを投入し、苦しい経営環境の正面突破を試みた吉野家ホールディングス。この背景には、マーケティング戦略の変革がある。
P&G出身者がマーケティングを陣頭指揮
それは「年間スケジュール」の策定だ。マーケティング責任者の伊東常務が中心となり、販売する商品のスケジュールを初めて年単位で作った。伊東常務は、マーケティングの専門家を数多く輩出するP&Gでヴァイスプレジデントを務めた人物。2018年10月に吉野家の常務に就任した。今年度から本格的に、マーケティング施策の陣頭指揮を執っている。
それまで同社では「次の施策はこれ、その次はあれ」というように、足元の状況だけを見て新商品を出してきた。だが1年先までは見据えておらず、「1つの施策が遅れると、その次の施策が投入できないことがあった」(広報担当者)。「いいものさえ出せば、顧客は増える」と、昔気質の考えも蔓延していた。
それに対し今年度は、3月に前述した新サイズ、5月に「ライザップ牛サラダ」、7月に「牛皿麦とろ御膳」と、きっかり2カ月ごとに新商品を打ち出している。1年を見据え、適した時期に適した商品を発売することで、一つひとつの施策がより効果的になったようだ。
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