吉野家「超特盛」ヒットを生んだ陰の主役とは P&G出身の「マーケティングプロ」が大活躍
低迷した前期から一転し、ここにきて急回復したのはなぜか。
1つには、3月7日に投入した牛丼「超特盛」のヒットがある。28年ぶりの新サイズとなった超特盛は、ご飯の量は大盛や特盛と同量だが、具の量が大盛の2倍ある。価格は780円(税込み、以下同)と、380円の並盛の2倍以上する。
多くのメディアで取り上げられたことや、ニュースアプリなどで割引券を掲載したこともあり、発売1カ月で想定の2倍となる100万食以上の売れ行きとなった。発売初月となった3月の既存店売上高を見ると、客数は前年比2.3%増だった一方、客単価は同5.7%と大きく上昇。その後も客単価が既存店売上高を牽引する展開が続いている。
隠れた大ヒットメニュー「小盛」
同時に投入した「小盛」の存在も大きい。発売1カ月で、同じく想定の2倍となる60万食を売り上げた。吉野家のマーケティング責任者である伊東正明常務は「超特盛が絶好調だが、小盛も隠れてヒットしている。日によっては超特盛より売れることもある」と話す。話題性で「一度試してみよう」と食べられた超特盛に対し、小盛は着実に消費者のニーズをつかみ、コツコツ売れているようだ。
小盛を注文するのは、糖質を気にする男性ビジネスパーソンのほか、女性や高齢の顧客もいるという。並盛の4分の3のサイズの小盛は、並盛より20円安い360円だ。価格に惹かれるというよりは、これまで「並盛は少し量が多い」と感じていた層に支持されている。「『どんぶり1杯は厳しいけれど小盛なら食べきれる』というお客様に、サラダやみそ汁と一緒にご注文いただいている」(伊東常務)。
これまでも、顧客が並盛を注文する際に「少なめ」と口頭で伝えた場合に、少量で提供することを実施してきた。だが、そもそもそのことを知らなかったり、混み合っているときに店員に長々と注文することをためらったりという障壁があった。今回、正式に小盛をメニューに掲載したことで、誰もが注文しやすくなった。
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