2年後に結婚した。33歳のときだった。智恵さんの実家から徒歩3分のところにマンションを借りたところ、妊娠してからの彼女は実家に入り浸りになった。
「私の分の食事まで実家からもらって帰って来るんです。新婚なのにそれはどうかと思いました」
智恵さんのほうにも言い分はあるだろう。雄一郎さんは几帳面かつマイペースな性格で会社から帰って来るのも遅い。その仕事がうまくいかず、心身を病みつつある。身重の自分を気遣う余裕もないようだ。今後の暮らしが不安になり、実家の両親を頼り、そのうちに気持ちが雄一郎さんから離れてしまうのは無理もない。
「子どもには生後3カ月のときに1度会えたきりでした。自宅に戻ってこないまま離婚しようと言われても納得できません。結局、弁護士を入れて調停をすることになりました」
調停の結果、毎月の養育費は少額にする代わりに、雄一郎さんが子どもに会えるのは年に1回の「生存確認」だけとなった。その場には智恵さんの父親だけが孫を連れて現れる。なんとも気まずい対面である。
「スープの冷めない距離などと言いますが、熱々の距離で住むのは考えものだと思いました」
心理カウンセラーの講座での気づきが気持ちを楽に
会社を半年間ほど休むと雄一郎さんは元気になった。復職してからは、一緒に暮らせる人がほしいと思い始め、婚活を再開。しかし、「いいなと思う人からは連絡先をもらえず、アプローチしてくれる女性とは気持ちがかみ合わない」という日々が続く。
「復職してしばらくは残業が禁じられていたので、以前から興味があった心理カウンセラーの講座に参加することができました。自己開示しながら相手の話も聞くというグループワークなどで、気持ちが変わったと感じています。幸せそうに見える他人にも必ず何か悩みがあるんですね。自分だけが不幸だと思うのは間違いだとわかりました。
婚活に関しては、離婚して養育費を払い続けているという弱点も明かしたところ、それでも自分についてきてくれる女性にアプローチするのがいいよ、というアドバイスをもらいました」
悩みがあるのは自分だけじゃないし、弱点を隠さなくてもいい。この発見は雄一郎さんの気持ちを楽にした。婚活の場での振る舞い方にも慣れてきて、数人の女性とマッチングすることに成功。そのうちの1人が保育士の美佐さんだ。
「3回目のデートですべてを話しました。離婚のこと、子どものこと、病気のことも。彼女は『何となくわかっていた。心配はしたけれど、それであなたとの関係が変わるとは思わない』と言ってくれたんです」
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