「苦になる結婚」「ラクになる結婚」の決定的な差 39歳男性が2度目の結婚で悟ったこと

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美佐さんは苦労人だ。両親が営んでいた事業が傾き、家計を支えるために昼は保育士として働き、夜はラーメン店でアルバイトをした。少ない給料の中から月10万円を両親に渡し続けていたという。

「私たち2人の性格はまったく違います。私は几帳面な文化系。一人旅行が好きで、年間2万キロぐらい車で走った時期もあります。彼女は大ざっぱで、バスケ部のキャプテンをしていたほどの体育会系です。実家を支えるので精いっぱいだったのか旅行の経験はほとんどありませんでした」

交際してからは雄一郎さんが美佐さんを各地に連れて行った。「宿は安くていいけれど食事にはお金をかける」といった点では趣味が一致。2人の仲は深まり、結婚して2年が経過する今に至るまで大きなケンカをしたことはない。

「私の家事分担はゴミ捨てぐらいです。残業してから帰って来ると帰宅するのが22時ぐらいのため。妻からは『ゴミ捨てだけでは家事分担とは言わない!』と指摘されていますが……。前の結婚では、台所の使い方などでも先妻とぶつかっていました。お互いの実家のやり方を曲げなかったんですね。今は、妻に好きにやってもらっています。私はやれる範囲でやる、というスタンスです」

必ずしも家事を平等に負担することが家庭円満につながるとは限らない。片方が不満なのを押し切るようでは話にならないが、役割分担をきちんと話しあったうえで、主導権を握ったほうを可能な範囲でフォローするほうが円満という場合もある。

共同生活では「折り合いをつける」ことが不可欠

「妻は先回りしていろいろ考えてくれる優しい女性です。私よりもよっぽど自立しています」

愛情だけでなく尊敬の気持ちがある限り、雄一郎さんと美佐さんの夫婦の幸せは保たれるだろう。ただし、懸案が1つだけある。子どもが大好きな美佐さんは結婚してからすぐに不妊治療を続けているのだ。

「生活費は私の給料で賄い、妻の給料の大半は不妊治療に費やしています。2年間で300万円以上は使っているはずです。先輩からは『撤退ラインを決めておけ』とアドバイスしてもらい、250万円と決めたのですが、すでに突破してしまいました。初期に流産を経験したことがあり、諦めがつかないんです。私としても頑張っている妻に対して『もうやめよう』とは言い出しにくいです」

不妊治療での苦労を通して、この晩婚さん夫婦の絆は深まっているのかもしれない。雄一郎さんからも美佐さんへのいたわりと気遣いが感じられる。

「先日、結婚2周年を祝って食事に行きました。私が『(自分が)すごく幸せだと相手に負担をかけてしまっているかもしれない。僕たちはお互いがそこそこ幸せだからいいよね』と話したところ、『そう言ってもらえるのは嬉しい』と妻も喜んでくれました」

配偶者という他者との共同生活では「折り合いをつける」ことが不可欠だ。お互いに得手不得手があり、生活に関する要望も異なったりする。雄一郎さんは家事が苦手で仕事と旅行に集中したい。美佐さんはとにかく子どもが欲しい。

でも、一緒にいることが心地よいからこそ、相手の要望をできるだけかなえてあげようと努力する。それは苦行ではない。相手次第でその努力は楽しいものとなるのだ。雄一郎さんの言う「そこそこの幸せ」の意味だろう。今、雄一郎さんの表情に陰りは見えない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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