国際的スパイ「007」を黒人女性が引き継ぐ理由

MeToo時代「ジェームズ・ボンド」は時代錯誤

ウォーラー=ブリッジは、デイリー・メールに対して、「このシリーズは成長しなければいけない。変革しなければ。この映画が女性を正しく扱うことは大事。でも、彼(ボンド)がそれをやる必要はない。彼は、彼のままでいないと」と語った。

その言葉は、この情報に信憑性を与えるだけでなく、この大胆な決断に、十分すぎる説得力をも与えている。時代が大きく変わる中、57年続いてきたシリーズは、これまでのままだと、おそらく死ぬ運命にあったのだ。

「#MeToo」以降、ボンドは時代錯誤に

父(「007」を人気映画シリーズに仕立てたアルバート・ブロッコリ)から財産を引き継いだ映画プロデューサーのバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンは、時代の流れに合わせることの重要性を、以前から理解している。

『007/カジノ・ロワイヤル』でも、彼らはそれをやった。よりリアルでダークなスパイ物『ボーン・アイデンティティー』シリーズが人気を集めるようになる中、彼らは脚本家にポール・ハギスを迎え、主演には、やや野生的で陰のあるクレイグを起用して、従来のファンタジー感を薄めたのだ。

それでも、クレイグは当時、「映画自体がシリアスでリアルになっても、ボンドがマティーニを傾けて、かっこいい車に乗り、おしゃれなスーツを着るという部分は守らないといけない」と言っていた。毎回、若い女性を取っ替え引っ替えするのも、そうだ。ボンドがボンドである以上、それは変えられない。たとえ黒人俳優のエルバを起用しても、彼が演じるのがボンドならば、そこは同じになる。

そしてそれは、2019年において、非常に時代遅れで無神経なヒーローを意味する。仕事を通して知り合った女性に、任務遂行中に手を出すなんて、まさに「#MeToo」ではないか。

クレイグの相手役が20歳近くも年下というのも、ハリウッドの伝統的な女性への年齢差別だ。そもそも“ボンドガール”というもの自体が女性蔑視である。それはずっと前から言われてきたことだが、新作が出るタイミングであらためて、「#TimesUp」支持者から猛攻撃に遭うのは、目に見えている。

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