映画「新聞記者」の異例ヒットが示す新しい市場 キーワードは「時事」「応援」「知ってる」

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話は違うが、「#いだてん」においても、同様の現象が起きている。こちらも絶賛の嵐。その背景にあるのはもちろん、過去の大河ドラマと比較したときの「いだてん」の世帯視聴率の低さだ。「視聴率が低い→だから『いだてん』はつまらない」という論調に対するアンチの意識で、「いだてん」ファンは「応援」のツイートを重ねる。

そういえば、昨年の映画界で話題をかっさらった快作『カメラを止めるな!』があれほど支持された理由として、当然作品のすばらしさが第一だろうが、加えて、「もう映画の時代なんて終わりだ」という空気が広がる中、ああいう野心的な映画を応援してあげたいという、映画ファンの意識も多分に影響したはずだ。

言いたいことは、これからのエンタメ市場において、まずは深く狭い「応援クラスタ」を形成することが大切で、そのためには、コンテンツのアンチ性(世間への反逆性)をハッキリさせなければいけないということだ。そうすれば、「応援クラスタ」は自走し始め、自ら拡散・増殖して「深く広く」なっていく。逆に言えば、最初から万人に深く広く愛されようというのは、このご時世、得策ではない。

「知ってる」エンタメを観客は求めている?

3つ目、最後の視点は「知ってるエンタメ」市場である。ここだけ持って回った言い方になっているが、これは、今月5日の朝日新聞に掲載された「実写版『アラジン』ヒットの理由」という記事における、映画・音楽ジャーナリスト=宇野維正氏へのインタビューの見出しに掲げられていた「求められた『知ってる物語』」という言葉遣いから引用した。

ここで宇野維正氏は、映画『アラジン』のヒット要因として「アニメ公開時の1993年に王女に憧れていた子どもが四半世紀を経て大人になり、劇場に足を運んでいること」を挙げており、また「ディズニーは自社の古典を次々にリメイクしています。それは知っている物語を、客側も求めているから」とも語っている。

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