映画「新聞記者」の異例ヒットが示す新しい市場

キーワードは「時事」「応援」「知ってる」

1つは「時事エンタメ」市場の可能性である。国際NGO「国境なき記者団」の「2019年報道の自由度ランキング」で日本は180カ国・地域中67位だったという(2018年も67位で、9年前の2010年は11位だった)。巷間言われているように、マスメディア報道での「忖度」が仮に事実だったとしても、マスメディア界に比べて映画界では、まだ比較的に表現の幅が担保されているだろう。

事実、いろいろな経緯があったとしても、映画『新聞記者』は作りえたのだし、その『新聞記者』が話題を呼んだということは、ジャーナリスティックな視点で「現在進行形のさまざまな問題をダイレクトに射抜く」コンテンツには、大きな可能性があるということだ。

内閣情報調査室官僚・杉原(松坂桃李)と新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)が主演(写真:© 2019 『新聞記者』フィルムパートナーズ)

注目したいのは、この映画の撮影期間である。公式パンフレットの松坂桃李のコメントによると、約2週間という極めて短い期間に一気に撮影されたという。

「時事」という以上、スピードが重要となる。「時事エンタメ」コンテンツ作りには、企画から完成までを短期間で一気に進めるプロセスと知恵が必要となろう。

絶賛ツイートをする人たちには「応援」の意識

2つ目に指摘したいのは「応援エンタメ」市場の可能性。今回この原稿を書くために、日がな「#新聞記者」のツイートを眺めていたのだが、とにかく絶賛絶賛の嵐なのだ。映画やコンサート関連のツイッターは、往々にして絶賛発言が大勢を占めがちなのだが(自分の出費を正当化したいという気持ちの表れか)、それでも今回は絶賛比率がとみに高い。

文面・文体から推測すれば、今回「#新聞記者」で絶賛ツイートをしている人の多くは、「現在進行形のさまざまな問題」に対して、そもそもが批判的な人々だったと思われる。そういう人たちが、この映画を見て、さらに確信を深めて、好意的なツイートをするという構造だと考えるのだ。

働いているのは「応援」の意識である。この映画を応援したい、1人でも多くの人に見てほしいという意識。その背景にあるのは、「この映画は現在の主流の論調に乗っていない、主流に対してアンチだ」という認識だろう。だから「応援」してあげたい、「応援」してあげないとヤバいと思うのだ。

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