映画「新聞記者」の異例ヒットが示す新しい市場

キーワードは「時事」「応援」「知ってる」

映画「新聞記者」のポスター(画像:© 2019 『新聞記者』フィルムパートナーズ)

この情報過多の時代、まったく未知のコンテンツに誘引することには、とてつもなく大きなハードルがある。だとしたらすでにある程度の認知が進んでいる既存コンテンツ(のリメイク)のほうが安全ということだ。このことは、最近のテレビ界における漫画原作ドラマの乱立にもつながるものがあると見る。

もちろん映画『新聞記者』は既存コンテンツではない。

ただ「現在進行形の(=『知ってる』)さまざまな問題」をかなりダイレクトに取り上げている分、見る側はスムーズに話に入っていけるし、とくに先の「応援クラスタ」の多くは、「知ってる問題」への怒りを動機として、映画館に足を運んだのではないか。また原案である望月衣塑子の同名著書がベストセラーとなったことも、この映画の「知ってる」感に貢献しただろう。

エンタメ界にとって強烈な差別化要因はなにか

今から約30年前、私の大学時代、イギリスの音楽ユニットであるスタイル・カウンシルが好きだった。そのかっこいい見てくれやおしゃれなジャケットに惹かれてアルバムを買って、歌詞カードに驚いた。

音だけ聴いて気に入っていた『Walls Come Tumbling Down!』(1985年)が階級闘争の歌だったり、『Right To Go』(1987年)が投票率向上を呼びかける歌だったり、はたまたタイトルからして『ホワイトハウスへ爆撃(Dropping Bombs on the Whitehouse)』(1984年)という、ものものしい曲まである。それらに驚くと同時に、「なぜ日本の音楽家は政治を遠ざけるのだろう?」と疑問に思ったものだ。

エンタメ界全体に「政治のことは面倒くさいから避けておこう」という機運が蔓延していることはよくわかる。でも、だからこそ「じゃ裏をかいて、政治のことに向かっていこう」という判断が強烈な差別化になるのに、とも思う。

そして、スタイル・カウンシルやクラッシュ、ブルーハーツ、RCサクセションのように、「王様は裸だ」と叫ぶことで王様になったバンドのことを懐かしく思い出すのだ。

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