これまで、ビットコインをはじめとする各種の仮想通貨が世に出て、またさまざまな業者がキャッシュレス決済に参入してしのぎを削っているが、フェイスブックはすでに持っているユーザーの数と多国間にまたがる国際性が桁違いなので、リブラが実現することのインパクトは極めて大きいと思われている。
フェイスブックのリブラ構想に対しては、各国の金融規制当局やメディアなどには警戒的な反応が目立つ。
主な心配として挙げられている懸念を拾うと、以下の6つだ。
(2)同社が持つユーザーの個人情報とリブラの取引から得られるであろうデータが合体した場合にビジネス上あまりに強力なデータになるかもしれないということ
(3)銀行やカード会社をはじめとする既存の業者の決済・送金ビジネスが奪われるのではないかということ
(4)多国間にまたがるリブラの取引が広く使われると、一国の金融政策が有効でなくなる可能性があるのではないかということ
(5)リブラの仕組みやフェイスブックが破綻した場合、金融システム全体に与える負の影響が甚大になるのではないかということ
(6)フェイスブックが、リブラの取引から得られたデータを社会的によくない目的に使うのではないかということ
などがある。
巷間「GAFA」と総称される巨大IT企業4社の中で、これまでのところフェイスブックは相対的に行儀が悪くて信用がない。個人情報の漏洩や、データが政治利用されたケースなどで批判されてきた。「不都合な情報が他社ではバレなくて、フェイスブックではバレた」というだけのことかもしれないが、同社がいまひとつ信用されていないことが懸念を大きくしている。
金融に関する政治や規制当局側はリブラに対して非常に警戒的で、アメリカ下院金融委員会の委員長は「開発停止を求める」と声明を発表した。また、英イングランド銀行(中央銀行)のマーク・カーニー総裁は「高い基準の規制が必要」と発言した。
リブラはユーザー側から見たらどうなのか?
各国の政府や国際的なものも含めて規制当局はリブラに警戒的だし、今のところ声は大きくないが、既存の金融ビジネスの側では、リブラの普及によって、決済いや送金のビジネスによる収益を失うことや、決済等のデータを失うことの影響を怖れているはずだ。その怖れは正しい。とくに、これまで銀行が預金口座の動きを通じて持っていた情報上の独占的な地位を失うことは、銀行ビジネスの存立基盤を損なうにちがいない。
もっとも、これはリブラがなくても早晩そうなるし、フェイスブックはただその状況の実現を加速するにすぎない。問題は既存の金融ビジネスの生き残りではなく、ユーザーにとってのメリット・デメリットだ。先程の6つの懸念を、リブラを使うユーザーの立場から見てみよう。
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