「夫婦と子の家族」は今や3割弱しかいない現実 2040年には単身世帯の構成比が約4割になる

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今後は、ソロたちの支持がなければ立ちゆかなくなることは明白でしょう。ファミリーレストランのガストがお一人様(ソロ)専用の客席を用意したことは、その1つの表れです。もはや、ファミレスは、「ファミ(リーの)レス(トラン)」ではなく、「ファミ(リー)レス(less)」となってしまうかもしれません。

では、このままいくと、昭和時代に中心を占めていた「夫婦と子」からなる家族という形態は、本当に消滅してしまうのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。未婚化が進んでも、夫婦になる人がいなくなるわけではないし、少子化が進んでも生まれてくる子どもがいなくなるわけではありません。家族は消滅するのではなく、人と人が関わるコミュニティの機能としての家族のありようが変わるのだと思います。

家族とはいったい何か

そもそも「家族」とはなんでしょうか?

アメリカの社会学者タルコット・パーソンズ氏は、「家族は子どもの養育とメンバーの精神的安定という2つを本質的機能とする親族集団であり、必ずしも共住を前提としない」と言っています。さしずめ、現代においては、子を持たない夫婦もいますから、必ずしも「子どもの養育」が必須条件とはならないし、血縁関係に限定されるものでもないかもしれません。

となると、「家族とは、構成するメンバーの経済的生活の成立と精神的安定を機能とする契約に基づいた集団であり、必ずしも共住を前提としない」という定義もできます。共住を前提としない……つまり、同居することだけが家族ではないのです。ここにこそ、家族を消滅させない1つのヒントが隠されています。

最近では、コレクティブハウス的な機能を持つ住居に、年齢や家族形態がバラバラな住人が共同生活をするパターンも見られ、それを「血縁によらない新しい家族の形」とする向きもあります。

が、それは、新しいというより、ある意味「所属するコミュニティ」への原点回帰といえます。江戸時代の裏長屋や農村地方の村社会もそうでしたが、寝食を共にする居場所をベースとして、その場所に集う人間を擬似家族としてコミュニティを形成するというのは、もっとも原始的なコミュニティスタイルです。

それ自体は否定しませんが、共住を前提とした縛りがあることがかえって、ストレスを生むこともあります。所属することでの安心というのは、それと引き換えに、空気を読んだり、不本意ながら同調したりするという我慢も伴います。所属とは、皆と一緒なら安心だ、という共同幻想を信じることだからです。そしてその共同幻想が、同調しない者を敵視し、残酷に排除してしまう行動に向かうことも歴史が証明しています。

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