マツダは、なぜ「似通った車」を造り続けるのか MAZDA3やCX-30など、外観が似ている理由とは

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今のマツダはトヨタと業務提携を結んでいることから、ミニバンの供給を受けるなどの対策も考えられる。一部の販売店ではこれを希望しているが、メーカーは「ヴォクシーなどのOEM車をマツダが取り扱うことはありえない」という。

それでもミニバンユーザーのために、トヨタのミニバンをマツダの店舗で代行的に販売するなどのサービスは行っていいだろう。今後はクルマのユーザーが急減するので、販売店がつなぎ止める対策を希望するのは当然だ。

以上のようにマツダが似通ったクルマを造り続ける背景には、さまざまな理由がある。メーカーのイメージを統一させ、商品開発についても、選択と集中を図って優れた商品力とコスト低減を両立させる。メカニズムが進歩すればほかの車種への応用も短時間で行われるから、足並みをそろえて機能を改良できる。こういったメリットが得られる一方で「外観がどのクルマでも同じに見える」という評価も生じた。

売れ行きは国内と海外で異なる

魂動デザインとスカイアクティブ技術の併用で、2012年以降のマツダ車は商品力を格段に向上させたが、売れ行きは国内と海外で大きく異なる。海外販売台数は2011年3月期が106万7000台、2019年3月期が134万6000台と順調に伸びたが、国内販売は2011年3月期が20万6000台、2019年3月期は21万5000台で伸び悩んでいる。国内販売比率も約14%にとどまり、魂動デザインとスカイアクティブ技術の効果はいま一つだ。

欧州仕様の「 CX-30」(写真:マツダ)

今後、CX-30のように比較的コンパクトで、なおかつ空間効率の優れた車種をそろえると、日本国内でもマツダ車を購入しやすくなる。先に述べたマツダのミニバンユーザーに配慮した商品展開も必要だ。

そして6速MTを幅広い車種に用意するのが今のマツダ車の特徴だから、このトランスミッションが似合うバリエーションを整えると、ユーザーから喜ばれる。

例えば高回転域の吹き上がりが優れた自然吸気のガソリンエンジンなどだ。昭和の香りがするオジサン的なスポーティーカーだが、今のマツダは、古典的な価値観に最先端技術を組み合わせるクルマ造りを行う。これは他社とは違う個性だから、突き進めるとよい。

今はクルマ好きの人口が減っているが、それ以上の勢いでわかりやすいスポーティーカーが姿を消している。スズキスイフトスポーツのような小さくて運転の楽しいクルマをマツダの最先端技術でそろえたら、共感を得られると思う。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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