「老後2000万円」問題の落としどころは何か 公的年金、私的年金と税制の横断的な議論を

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では、この問題の落としどころをどう見出せばよいか。それは、今年が参院選の年でなかったら進んだであろう議論の行方を想像するとよい。

歴史に「イフ」はないが、参院選がなかったら、今年後半にも老後の資産形成を支援する仕組みについて政府で議論が深められるはずだった。そのために、もともと予定されていた議論がある。それは、年金の財政検証とNISA(少額投資非課税制度)の恒久化の可否である。

安倍内閣発足時に議論の芽生えがあった

第2次安倍内閣が始まったばかりの頃から、その議論の芽生えがあった。2012年12月に発足した第2次安倍内閣は、組閣後すぐにNISAの新設を決めた。NISA制度は金融庁が所管するが、「NISAとiDeCo、これが税制面でお得な活用法だ」で指摘したように、非課税貯蓄の仕組みなので非課税の拠出枠をどの程度認めるかは、金融の問題というより税制の問題である。

2013年度の与党税制改正大綱は、「家計の安定的な資産形成を支援するとともに、経済成長に必要な成長資金の供給を拡大することが課題」であり、このために2014年1月から10年間、500万円の非課税投資を可能とするNISAを新設すると明記した。

ただ、大綱にもあるように、老後の資産形成支援ではなく、アベノミクスの3本の矢に資するように経済成長に必要な成長資金の供給を拡大する、つまり、株式や債券の投資を促すことが重視された。

しかも、NISAは恒久的な仕組みではなく、10年間の時限措置だったため、このことが冒頭の老後2000万円問題につながる波乱要因ともなる。2013年度の大綱では、NISAの拡大は今後の検討課題とするにとどまった。

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