「老後2000万円」問題の落としどころは何か 公的年金、私的年金と税制の横断的な議論を

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翌2014年度の与党税制改正大綱は、「年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間および世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金をはじめとした各種年金制度間のバランス、貯蓄商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意して、年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する」と明記した。

このとき、企業年金などとともに、NISAが老後の生活を支える資産形成であるという観点が入ってきた。今回の金融審議会の報告書にある論点も、1つはここに端を発している。ただ、2014年度大綱の表現は穏当だ。「公的年金だけでは足りない」などとは書いておらず、「公的年金を補完する」仕組みを総合的に検討するとしている。

これに対し、金融審議会の報告書は「老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか」という問題設定を打ち出してしまったため、公的年金の「100年安心」をうたう政府のスタンスと矛盾しかねない報告書となってしまった。

欧米でも公的年金だけで豊かな老後は送れない

こうした議論の背景があって、今年に入って老後の資産形成のあり方を考える議論が加速した。公的年金は社会保障審議会年金部会で、企業年金や個人年金は同じ社会保障審議会の企業年金・個人年金部会で議論され、NISAを中心とした議論は金融審議会で進められた。そして、欧米諸国における企業年金、個人年金と非課税貯蓄制度について、政府税制調査会は現地調査を実施した。

欧米諸国を見ても、公的年金だけでリッチな老後生活が送れる国はない。私的年金や非課税貯蓄制度と補完し合いながら、老後の生活に備えている。頭ごなしに「2000万円が必要」というような金額ありきの議論は欧米でもしていない。

老後の生活を支える公的年金の給付水準を見極めながら、私的年金や非課税貯蓄制度を考えていかなければならない。その際、公的年金でどこまで老後の生活を保障するかについて、大別して2つのグループに分けて考える必要があろう。

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