非正社員はどれだけ法律で守られているのか-これだけは知っておきたい《特集・雇用壊滅》
Q5. 工場で派遣として3年間働いたあと「期間工として働かないか」と会社から言われました。正社員として雇ってもらいたいのですが。
製造業派遣では、派遣可能期間の上限が3年です。3年の期間満了後、企業が引き続き派遣労働者を使用しようとする場合、直接雇用を申し込む義務が生じます。
ただし、直接雇用の形態について法律では何も定めていません。3年間派遣社員として働き、労働者の能力が評価されたのですから、法の趣旨からすれば本来、期間の定めのない正規の社員として雇用すべきですが、明文規定がないため、企業の判断に任されています。労働者としては、正社員として雇ってもらうか、できるだけ長期の有期雇用契約を結ぶよう会社に働きかけましょう。
なお、派遣から直接雇用(有期)に切り替わった直後、雇用契約の期間満了と同時に雇い止めに遭うケースも出ています。これについては、解雇権濫用法理が類推適用される場合があります。昨年末、東京地方裁判所では、派遣社員として3年間働いた後、1年契約の嘱託社員として2回契約を更新し、3回目の更新を拒否された事案で「合理的理由がなく社会通念上相当でない」とし、雇い止めを無効とした判決が出ました。
Q6. 3年間勤めた派遣先企業から「3カ月だけ契約社員で働いてくれ。そのあとまた派遣社員として来てもらうから」と言われました。
派遣可能期間の上限3年を超えると、企業には「直接雇用申し込み義務」が発生します。派遣労働者が希望すれば、企業は直接雇用の申し込みをしなくてはなりません。
ところが、期間算定に当たっては、3カ月超の中断を置けば新たに派遣期間が始まることになっており、この期間をクーリング期間と呼んでいます。これを悪用して、クーリング期間だけ契約社員として直接雇用し、それが終わると再び派遣社員として使用する企業が現れました。
こうした労働者の使い方は、明らかに労働者派遣法の趣旨に反します。厚生労働省も「クーリング後再び派遣を予定することがないよう適切に行われるべきである」という趣旨の通達を出しています。ご質問のケースでは、直ちに直接雇用を申し入れるよう派遣先に求めましょう。
Q7. 雇い止めと同時に、社員寮も出ていくよう会社から言われました。住む場所が見つからず困っています。
周辺の賃貸物件と比べて、ほぼ同水準の家賃を払っている場合、借地借家法が適用される可能性があります。借家となれば、家主は正当な事由がなければ解約できません。出ていけといわれて、すぐに従う必要はありません。
光熱費などの実費しか払っておらず、借家とは認められない場合でも、企業は退去に当たって一定の猶予期間を設けるべきです。家賃滞納のケースでさえ、家主は自力で追い出してはならず、法的な手続きが必要です(自力救済の禁止)。ましてや雇い止めの場合、その社員寮をすぐに利用することもないでしょうから、会社も労働者に対して十分に配慮すべきです。
おがわ・ひでお
京都大学法学部卒、共同通信社を経て1997年弁護士登録。ウェール法律事務所共同経営者。労働関連に積極的に取り組む。
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