非正社員はどれだけ法律で守られているのか-これだけは知っておきたい《特集・雇用壊滅》

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非正社員はどれだけ法律で守られているのか-これだけは知っておきたい《特集・雇用壊滅》

回答者 小川英郎・弁護士

Q1. 6カ月契約の登録型派遣として働いていましたが、3カ月後に派遣先から「今月で契約を打ち切る」と言われました。残りの給料はどうなるのでしょうか。

労働者派遣は派遣労働者と派遣元、派遣先の3者の関係から成り立ちます。労働者が雇用契約を結ぶのは、あくまでも派遣元である派遣会社。その派遣会社が派遣先企業と労働者派遣契約を結び、労働者が派遣先で働くことになります。

質問にある派遣の中途解約とは、派遣先企業が派遣会社との契約を解除することを意味します。その結果、派遣会社が派遣労働者を解雇しようとするわけです。労働者からすると派遣先企業から解雇されたかのように見えますが、法律的にはこうした二重構造になっています。

したがって、派遣先企業が契約を打ち切ったからと言って、自動的に派遣会社と派遣労働者との雇用関係がなくなるわけではありません。

登録型派遣の場合、派遣期間に相当する期間の有期雇用契約が結ばれています。有期雇用については、労働契約法17条で「やむを得ない事由がある場合」でなければ、中途で解雇できないと定められています。

派遣先に契約解除されたというだけでは、この「やむを得ない事由」に当たりません。残りの期間についても雇用関係は継続していると考えられるため、その分の給料は派遣会社に請求できます。

なお、直接雇用の期間社員も有期雇用なので、やむを得ない事由がないかぎり、中途解雇はできません。

Q2. 契約社員として6カ月更新を繰り返し、3年以上勤めていますが「次は更新しない」と会社から言われました。辞めなければならないのでしょうか。

有期雇用契約で期間満了を理由に打ち切ることを「雇い止め」と呼んでいます。有期雇用については、契約期間が満了すれば雇用関係も終了するのが原則です。

ただし、更新を何度も繰り返し、長期間にわたって同じ会社で働いている場合、労働者は「次も更新があるはず」という期待を持ちます。このように、契約の反復更新などによって労働者側に更新への期待が生じている場合「解雇権濫用法理」が類推適用され、期間満了だけを理由とする雇い止めは許されない場合があるというのが最高裁判所の判例です。

解雇権濫用法理は、判例の積み上げによって確立されたもので、現在では労働契約法16条で明文化されています。同条では「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は解雇が認められないとしています。

Q3. 登録型派遣で10年以上勤務。派遣先から「次は契約更新しない」と言われましたが、継続できませんか。

派遣の雇い止めの場合は、直接雇用と事情が異なります。派遣先企業への就業継続を求めることができるかが問題となります。

派遣先企業と派遣労働者との間には、そもそも雇用関係がありません。派遣会社との雇用関係は名ばかりで実態がなく、実際には派遣先企業と派遣労働者との間で「黙示の労働契約」が成立しているとして裁判で争った事例もありますが、これまでのところ、なかなか認められていません。しかし、このような解釈では、派遣労働者は事業者間の取引の都合で契約を切られても、何ら権利を主張できないということになってしまいます。現在、派遣労働に関する社会的な認識が変わりつつあり、今後は、期間制限を超えて違法に派遣を継続しており、派遣会社が雇用主としての実態を失い、派遣先企業が労働条件を決定しているような場合には、派遣先の雇用責任が認められるケースも出てくると思われます。

Q4. 常用型派遣として働いていましたが、派遣先企業から契約を解除されました。すると、派遣会社から「次の派遣先が見つからないので解雇する。そのことは就業規則に明記してある」と言われました。

常用型派遣は派遣会社に常時雇用されて、派遣労働を行うものです。したがって、普通の正社員と同じく、労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用されます。派遣先企業が見つからないからといって直ちに解雇するのは、社会通念上相当とはいえないでしょう。

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