引きこもりを過剰に警戒する人の大いなる誤解 心の特性は暴力や争いとは本来程遠いタイプ

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子が親に望んでいることとは、温かく自分を肯定してくれることだと思う。引きこもるといっても、1人ひとり状況は違うものの、「周りが自分の話を心から聞いてくれない」とメールや対話などで筆者に訴える当事者たちは、とても多い。

富山県射水市で、月に2回の引きこもり家族会に加え、少人数の会も随時開いているKHJ家族会富山県支部のNPO「はぁとぴあ21」の高和洋子理事長は、こう話す。

「子が自分の行為を反対されたり、否定されたり、追い詰められたり、戻そう、治そう、正そうとされれば、人間としての存在価値を感じられなくなる。引きこもる行為は、誰もが起こりうる選択肢であることを理解し、“生きててよかった”と思えるよう、本人の主体性を大切に寄り添っていってほしい」

子どもの側の気持ちから考えると、親に話をしても心から聞いてくれない。話をしても、親の価値観が表に出た瞬間、これまで痛い目に遭ってきた経験から言葉はなくなる。

最初に子が物や壁にあたったり壊したりするのも、親がわかってくれないことへの代償行為であろう。一般的に、家庭内暴力に行きつく背景には、それでも親がわかってくれず、さらに責め立てたり、追い詰めたりすることなどによる、それぞれの家庭内での長いストーリーがある。

それまでの間に家族会などに相談できればいいのだが、もし暴力に遭った場合には、警察に通報したり、公的機関に相談してシェルターなどに避難したりするなど、世間体を気にして家族だけで抱え込まないようにしなければいけない。

孤立しないように支援していく体制づくりを

高齢化していく親子が、これからを生きていくためには、家族が公的な相談機関につながって、本人が家から出られなくても生活支援を受けられるような受け皿が大事だ。

しかし、せっかく家族や本人が勇気を出して相談しても、「親の育て方が悪い」とか「何でここまで放置していたんですか?」などと責められて、支援をあきらめてしまうなど、相談を受ける側の体制の問題もある。支援対象年齢の上限や障害認定の有無に関係なく相談に乗り、孤立しないように支援していかなければいけない。

また、窓口では資格を持った人が対応すればいいという話ではなく、やはり「引きこもる」人の心の特性の傾向や気持ちが理解できる人材を現場に配置、増員しなければいけないし、そのようなスタッフを育成して、研修も拡充していく必要がある。

池上 正樹 ジャーナリスト

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いけがみ まさき / Masaki Ikegami

1962年生まれ。通信社などを経てフリーに。著書に『大人のひきこもり』(講談社現代新書)など。

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