欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情 なぜ選挙戦を左右するほどになったのか
保護主義やポピュリズムで騒がしい米欧の政治情勢だが、ともすれば見過ごしがちなのが地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりである。
ヨーロッパでは欧州議会選挙で環境系の政党が躍進し、来年に大統領選挙を控えるアメリカでは、民主党の指名候補を決める予備選挙で、環境問題が大きな争点になっている。異常気象の頻発による地球温暖化への関心の高まりはもとより、格差の是正などを含めた左派の主張を結集させる論点として、環境問題の存在感が高まっていることは見逃せない。
バイデン前副大統領の「宣言」
「大統領就任初日には、われわれを正しい方向に導くために、オバマ―バイデン政権時代の提案をはるかに超え、前例のない新たな一連の大統領令に署名する」
この何とも勇ましい宣言は、アメリカの大統領選挙で民主党の予備選挙に出馬しているバイデン前副大統領が、6月4日に発表した環境問題に関する公約の一文だ。
民主党の候補者争いで支持率のトップを走るバイデン氏だが、本格的な公約を発表したのは環境問題が初めてである。自らが副大統領を務めたオバマ政権の取り組みを上回り、「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」とうたうなど、極めて意欲的な内容が盛り込まれた。
数ある政策のなかで、まずバイデン氏が環境問題での公約発表を選んだのは、民主党の予備選挙において、この問題が熱い注目を集めている証しである。世界の関心は米中貿易摩擦などに集まりがちだが、2020年の大統領選挙に向けた予備選挙の現場では、環境問題が見逃せない争点に育ちつつある。
環境問題の存在感が高まっているのは、アメリカだけではない。ヨーロッパにおいても、5月23~26日に投票が行われた欧州議会議員選挙において、緑の党などの環境系政党が大きく議席を増やした。イギリスのガーディアン紙が「静かな革命がヨーロッパを席巻した」と報じたように、欧州議会では4番目の会派となる議席数を獲得、国別でもフランスでは第3政党、ドイツでは第2政党となるなど、予想外の躍進を果たしている。
アメリカとヨーロッパで同時に進行する環境問題への関心の高まりは、世論調査にも明らかだ。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、アメリカで「気候変動(温暖化)は自国にとって深刻な脅威である」と答える割合は、2013年の40%から2018年には60%近くにまで上昇している。ヨーロッパの主要国でも、フランスで同様の回答が50%台から80%台にまで大幅に上昇したのを筆頭に、イギリスで約20%ポイント、ドイツでも約15%ポイントの上昇を記録している(図1)。
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