欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情

なぜ選挙戦を左右するほどになったのか

グリーン・ニューディール構想の特徴は、大胆な地球温暖化対策であるだけではなく、温暖化対策の強化を突破口にして社会・経済システムの広範な改革を実現しようとする点にある。具体的には、まず温暖化対策の強化により、新たな技術の開発や、関連産業による雇用の増加が目指される。

次に、創出された新たな雇用に関しては、労働者の権利保護や職業訓練の充実など、格差の是正を意識した取り組みが盛り込まれている。さらには、国家を総動員した政策が目指す理想像として、政府が働きたい国民すべてに雇用を保証する仕組み(『米民主党がブチ上げた「雇用保証」とは何か』)や、メディケア・フォー・オールといった大掛かりな改革を、グリーン・ニューディールの延長線上に位置づける向きもある。

対中政策とも連動している

バイデン氏の公約発表は、民主党の予備選挙における環境問題の吸引力の強さを表している。

左傾化が指摘される民主党において、環境政策以外の分野では、バイデン氏は中道寄りの立場を鮮明に打ち出してきたからだ。大胆に斬新な政策を打ち出すというよりも、「オバマ時代への回帰」を印象づけるのがバイデン氏の戦略であり、サンダース上院議員やウォーレン上院議員など、左寄りの性格が強い候補者と一線を画すセールス・ポイントである。

例えば医療の分野では、バイデン氏はメディケア・フォー・オールへの支持を明確にしておらず、オバマケアの漸進的な発展を主張するにとどまってきた。

ところが、環境問題は勝手が違った。実はバイデン氏にとって環境問題は、「オバマ時代への回帰だけでは物足りない」とする批判の象徴的な存在になりかねなかった。同氏のアドバイザーが、化石エネルギーの選択肢を残すなど、中道寄りの提案を模索しているとの報道が流れ、サンダース氏などから厳しい批判を受けていたからだ。

そうした批判の高まりからほどなく、バイデン氏は今回の公約の発表に踏み切った。医療の分野では左傾化圧力を受け流してきたバイデン氏も、環境問題が争点に浮上するや否や、直ちに「オバマ時代超え」を宣言した格好である。

バイデン氏の公約では、医療保険制度までをも含む社会・経済システムの改革を求めているわけではない。しかし、グリーン・ニューディールの考え方については、「非常に重要な枠組みである」と評価している。また、単なる温暖化対策にとどまらず、新技術・新産業の発展と、それによる雇用の創出を目指している点などでは、ほかの候補者と共通した広がりがある。

興味深いのは、対中政策との関連である。バイデン氏は、中国を名指ししたうえで、温暖化対策への取り組みが不十分な国からの輸入に対し、課徴金や輸入制限を行うよう提案している。また、産業政策や一帯一路構想を通じ、国内外で石炭エネルギーを補助していると批判し、国際的な連携によって対中圧力を強める方針も明らかにしている。

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