欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情

なぜ選挙戦を左右するほどになったのか

興味深いのは、アメリカとヨーロッパ主要国の双方において、環境問題が左右の政治勢力を分かつ争点になっている点だ。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスのいずれの国においても、気候変動を自国の深刻な脅威と指摘する割合は、右派の支持者ほど低く、左派の支持者では高い傾向がある(図2)。

とくに左右の違いが大きいのは、アメリカである。2018年の世論調査では、民主党支持者の9割近くが、気候変動を自国の深刻な脅威と指摘している。その一方で、同様の回答を行う共和党支持者の割合は、3割程度にとどまっている。

アメリカではほぼ民主党に限られた「現象」

アメリカにおける地球温暖化問題への関心の高まりは、ほぼ民主党支持者に限られた現象だ。2013年からの世論調査の変化をさかのぼると、気候変動を自国に対する深刻な脅威と回答する共和党支持者の割合は、20%台での微増にとどまっている。

一方で、民主党支持者による同様の回答は、60%弱から80%を上回るまでに増加している。あまり共和党支持者の意見が変わらない一方で、民主党支持者の意見だけが大きく変わり、その結果として党派対立が厳しくなる構図は、民主党の支持者が寛容になり、共和党支持者との意見の相違が広がった移民問題と似通っている(『日本人が知らない欧米のきわどい「移民問題」』)。

党派的な立場による意見の分裂からは、既存の政治に不満を抱える有権者のうち、左寄りの主張を持つ人々を惹きつける政策として、環境問題の魅力が高まっている様子がうかがえる。

左派の政策といっても、富裕層増税や大企業批判だけでは、どうしても新味に欠ける。その一方で、各地での異常気象の頻発により、地球温暖化の影響が実感され始めている。政府による対応が求められるなど、「大きな政府」との親和性が高いこともあり、左派勢力にとっては環境問題のもつ吸引力が際立ちやすい環境である。

とくにアメリカでは、グリーン・ニューディールの名の下で、環境問題を中心に据えて、左派的な政策を結集させていく試みが進んでいる。

グリーン・ニューディールは、2018年11月に投開票が行われたアメリカ議会中間選挙で、史上最年少の女性下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏が公約に掲げ、一躍有名になった構想である。アメリカ有力紙の記事件数をみると、中間選挙直後から件数が急増している。2019年に入ると、かねて民主党支持者に関心の高かったメディケア・フォー・オール(国家主導の国民皆保険制)を上回る月があるほどだ(図3)。

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