日本人が知らない欧米のきわどい「移民問題」 各国で移民や難民に対する寛容性に差
7月中旬に欧州を歴訪したドナルド・トランプ米大統領は、現地でもトランプ節全開だった。NATO(北大西洋条約機構)首脳会議にあわせて訪れたベルギーでは、NATO加盟国に国防費の増額を突きつけたと思えば、ロシアからのエネルギー輸入を進めるドイツを「ロシアの捕虜のようなものだ」と批判するなど、同盟関係のほころびを感じさせる言動を重ねた。
続いて訪問した英国でも、EU離脱(ブレグジット)を巡る閣内不和にメイ首相が苦慮している最中に、「メイ首相が(EUと)結ぼうとしている協定は、(ブレグジットを決めた)国民投票の結果とは異なる」「自分であれば別のやり方をしただろう」と言い放つなど、火に油を注ぐような発言を行った。
欧州の難民問題にあえて口を挟んだ
中でも目を引いたのが、欧州の難民問題への口出しである。トランプ大統領は、NATO首脳会議に関する記者会見で、「欧州は移民に乗っ取られようとしている。EUは気をつけなければならない」と述べた。英サン紙とのインタビューでも、「欧州が何百万人もの人(難民)を受け入れているのは悲しいことだ」「(難民によって欧州は)伝統的な文化を失いつつある」と持論を展開している。
欧州の難民問題は、NATO各国の国防費や、将来的な米英のFTA(自由貿易協定)交渉にも影響があるブレグジットと比べ、米国との直接的な利害関係は定かではない。まして、ドイツでメルケル政権が深刻な閣内対立に陥る原因になり、EUでもイタリアなどの難民に厳しい国とドイツなどとの対立が表面化しているなど、政治的には繊細な論点である。
それにもかかわらずトランプ大統領は、欧州の域内・国内問題に、あえて口を挟んだ。そこから浮かび上がるのは、欧米の違いを問わず、移民・難民問題が社会を切り裂く断層になっている現状である。
米欧の違いを問わず、移民・難民への対応については、政治的な立場による意見の乖離が大きい。欧州の一部には、移民に厳しいトランプ大統領の政策に共鳴する雰囲気が感じられる。
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