日本人が知らない欧米のきわどい「移民問題」 各国で移民や難民に対する寛容性に差
欧州各国では、概して右寄りの政党を支持する国民は難民に厳しく、左寄りの政党を支持する国民は難民に寛容だ。2017年に米ピュー・リサーチ・センターが行った世論調査によれば、英国、ドイツ、フランスといった主要国では、「難民の大量流入は重大な脅威である」と答える割合は、3割台に止まっている。しかし、これを支持政党別に集計すると、右寄りの政党を支持する国民は、その半数程度が難民を脅威と感じており、1~2割しか問題視していない左寄りの政党支持者と、大きく乖離している。
一方で、支持政党による差が小さい国は、そもそも国全体として難民の流入を脅威と感じる傾向が強い。イタリア、ハンガリー、ポーランドといった国では、支持政党の違いにかかわらず、5~6割の国民が難民の大量流入を重大な脅威だと認識している。国内での意見の差こそ小さいが、主要国との分断は深い。
そもそも欧州は米国より難民寛容度が低い
そこには、移民・難民への懸念を手掛かりに、トランプ大統領と欧州の右派が共鳴し、欧州域内・国内の分断が深まる可能性が指摘できる。実際にトランプ大統領は、大規模な反トランプデモが計画されている英国を訪れるに当たり、「英国民は、わたしのことを大好きなはずだ。彼らは移民問題でわたしに同意しているし、そもそも移民問題こそが、ブレグジットの理由だったはずだ」と述べている。
トランプ大統領の米国第一主義を支えたスティーブ・バノン前首席戦略官は、トランプ大統領の訪英にあわせ、ロンドンで欧州各国の右派政党要人と会談を持ったとも報じられている。
興味深いのは、難民に脅威を感じる傾向が強い国は、相対的に米国に好意的である点だ。同じくピュー・リサーチ・センターの調査では、英国、ドイツ、フランスでは、「米国の力に脅威を感じる」とする回答が3割を超えている。とくにドイツと英国では、中国よりも米国を脅威と感じる回答の方が多かった。その一方で、ハンガリー、イタリア、ポーランドでは、米国を脅威と感じる割合は2割程度に止まっている。
そもそも欧州は、米国と比べて人種の多様性への寛容さに欠ける。2016年にピュー・リサーチ・センターは、人種や国籍の多様性が自国に与える影響に関して、国際的な世論調査を行った。米国の場合には、多様性を肯定的にとらえる回答が約6割となり、否定的な見解は1割に満たなかった。
ところが欧州では、英国、フランス、ドイツといった主要国ですら、多様性を肯定的に評価する回答は2~3割に過ぎず、否定的な回答と拮抗している。ハンガリー、イタリア、ポーランドといった難民への警戒心が高い国になると、4~5割が多様性を否定的にとらえている。
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