日本人が知らない欧米のきわどい「移民問題」 各国で移民や難民に対する寛容性に差
実際に、移民問題を巡る論戦は熱を帯びてきた。民主党は、トランプ大統領による不法移民の取り締まり強化を猛烈に批判している。現場で不法移民の取り締まりを担当するICE(移民税関捜査局)の廃止など、極端な政策を主張する候補者も少なくない。
一方の共和党陣営は、不法移民の取り締まりは定められた法律を執行しているに過ぎず、ICE廃止等の民主党の主張は、国境警備の放棄につながる暴論だと批判する。「国境がなければ、国は存在しない」というのが、トランプ大統領の決まり文句である。
メキシコから来る人より、行く人の方が多い
ところで、米国と欧州が似通っているのは、移民・難民問題による国内の分断だけではない。「米国の移民、欧州の難民」という区別も、実態に即さなくなってきている。
従来の米国では、移民の主な流入先はメキシコであり、経済的に豊かな生活を求める「移民」としての性格が強かった。シリアなどの内戦が続く国から逃れてきた欧州の難民とは、色合いの違いがあった。
ところが最近の米国では、移民の流入先が変わってきている。増えているのは、エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラといった、政情不安を抱える中米の国々からの流入であり、メキシコとの人の行き来は、むしろ米国からの流出超になっているもようである。
「北のトライアングル」といわれる中米の国々からは、国内の治安の悪さなどを逃れようとする人々が、米国を目指している。移民というよりは、難民の性格が強い人たちだ。最近では、やはり治安が悪化しているベネズエラからも、米国を目指す難民が増えつつあるという。
難民の多寡は、流出元となる国の政情の安定に左右される。外交問題にもなり得る論点であり、容易に解決策は見いだせない。難民の受け入れが招く国内・域内の分断のみならず、米欧が向き合わなければならない課題は重い。
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