CSR企業ランキング 社会的責任を果たしている企業はどこだ
トヨタ自動車、ソニーなど日本を代表する企業が相次いで今期営業赤字に陥る見込みとなるなど厳しい経営環境の中、ここ数年日本企業が掲げてきたCSR(企業の社会的責任)経営にも変調はあるのか。東洋経済では独自に調査・集計した「CSR企業データ」と財務評価データを使い、10年後、20年後生き残りさらに成長を続けるサステナブル企業への新しい企業評価指標、CSR企業ランキングを作成した。「環境」や「雇用」などにおいて企業価値を高める優良企業はどこか、総合ランキングをみていこう。
総合首位はシャープ。太陽電池で世界首位級など環境関連事業を"本業"と位置づけるとともに、生産事業所のみならず連結対象子会社の非生産事業所なども対象に含めたグループ全事業所で国際的な環境マネジメントシステムISO14001を認証取得するなど、総合的な環境経営を推進、「環境」分野でトップとなった。また、NPOと協働により全国の小学校で地球温暖化問題など環境教育を実施、実績校は2007年度、08年度ともに500校以上に上る見込み。これらを受けて「企業統治+社会性」でも3位にランクインしている。
総合2位はトヨタ自動車。ハイブリッド車「プリウス」が同社のシンボルになりつつあるが、「財務」を含めた全分野で安定的に上位の食い込んでいるのが同社の強みである。前年の5位からランクアップ。
3位はパナソニック。こちらも各分野満遍なく上位につけている。そのなかで女性管理職比率(5.1%)、障害者雇用率(2.04%、いずれも07年度)など、ダイバーシティ(多様な人材活用)関連指標が相対的に高い水準にあることなどを受け、「雇用」が8位と健闘した。
本ランキングは今回が3回目となるが、シャープ、パナソニック、リコー、富士フイルムホールディングス、デンソー、東芝の6社は3回すべてで上位10社にランクインしている。
前回から大きく順位を上げた企業としては、NEC(28位→5位)、NTTドコモ(23位→10位)、ホンダ(67位→14位)、富士通(33位→15位)などが挙げられる。NECは「雇用」での評価が一挙にトップに上昇。「親の呼び寄せ費用補助」や「不妊治療費助成」などワーク・ライフ・バランス施策での充実度が特筆できる。ドコモは幅広い社会貢献活動実績を受けて「企業統治+社会性」でのポイントが上がった。ホンダは「雇用」と「企業統治+社会性」2分野で、富士通は「企業統治+社会性」で順位を上げている。
一方、順位を下げた企業は日産自動車(15位→29位)、キリンホールディングス(25位→44位)、セイコーエプソン(19位→48位)など。日産は「雇用」で、キリンは「雇用」と「環境」で、エプソンは「雇用」と「財務」でそれぞれポイントを下げている。
このように、今回順位変動に大きな影響を与えたのは「雇用」である。日本のCSR経営において、これまで雇用政策は重きを置かれていなかったが、ここ2、3年、企業はダイバーシティ施策や社員の人材活用に注力するようになってきた。不況入りで雇用不安が叫ばれる中、今こそ日本企業の真価が問われているといえよう。
CSR企業ランキングは上場会社を対象に雇用、環境、企業統治&社会性のCSR3分野と、収益性、安全性、規模の財務3分野でそれぞれ採点、総合点でランキングしたもの。銀行、証券、保険、その他金融や上場後2年に満たない企業は除いている。
(野津滋 =東洋経済統計月報)
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