登山者を恐怖に陥れるあの「エベレスト」の惨状 温暖化で遺体があらわになってきている
過去60年でエベレストの登山中に約300人が命を落とし、その多くが暴風や滑落、高山病が原因だ。今シーズンはすでに少なくとも11人が死亡しており、過去最多水準だ。犠牲者の中には、登山者が多すぎることが死亡原因とみられている者もいる。
ネパール政府は5月29日、登山者の渋滞と頂上での規則違反を防ぐため、登山の認可規定の見直しを検討していると発表した。
大きな危険を伴う遺体収容
ネパール山岳協会のアング・ツェリン・シェルパ前会長の推計によると、エベレストで死亡した登山者の遺体の少なくとも3分の1は山に残されたままだ。一部の遺体は雪崩によってバラバラになっていると彼は言う。
山の頂上付近で遺体を収容することには大きな危険が伴う。凍結した遺体は150キロほどの重さになることもある。急な落下や不安定な気候に見舞われながら、その重さを抱えて深いクレバス(氷河の裂け目)を越えることは、登山者たちを死の危険にさらしかねない。
それでも、何万ドルもの費用をかけて遺体の収容を強く望む遺族もいる。通常は標高約6400メートルより上の地点にある遺体は収容されない。
「山の上ではすべてのことが死のリスクを考慮して検討される」と、アング・ツェリン・シェルパ前会長は指摘する。「可能なら遺体は降ろしたほうがいい。しかし、登山者は常に安全を最優先しなければならない。遺体は彼らの命を奪う恐れがある」。
発見される遺体の数が増えていることは、エベレストに起きている大きな変化の一部だ。この10年、気候変動によってヒマラヤ地域全体が急速に変化している。