登山者を恐怖に陥れるあの「エベレスト」の惨状 温暖化で遺体があらわになってきている
エベレストの雪線高度は数年前より上昇しており、かつては厚い氷に覆われていた場所が現在は地面が露出している。登山者らの道具も、ピッケルから山壁の隙間に打ち込むピトンやスパイクに替わっている。
2016年、急激な氷河の融解によって下流地域に壊滅的な洪水が発生する危険が生じたことを受け、ネパール軍はエベレスト近くの湖の排水を行った。今年発表された研究によれば、エベレスト地域の氷河湖の大きさ(氷河の融解を示唆し、融解の加速にもつながる)が、過去3年で大幅に拡大した。
ヒマラヤの氷河の3分の1は今世紀中に消滅も
巨大な氷河に近く、ネパールとチベット間の国境をまたぐエベレストの登山がより複雑になっているとカミ・リタ・シェルパは懸念する。それはエベレストの商業化が進み、経験不足の登山者が増えていることに起因する。「氷河が溶け続ければ、すぐに登頂がより困難になるだろう」と彼は言う。
先行きは厳しい。2月に発表された高高度地域の温暖化に関する報告書「Hindu Kush Himalaya Assessment」は、世界で最も野心的な温暖化対策目標が実現できたとしても、ヒマラヤの氷河の3分の1は今世紀中に消失すると警鐘を鳴らしている。報告書によれば、温暖化と温室効果ガスの排出が現状のまま進めば、今世紀中に3分の2が消失するという。
ネパール観光局の局長で、登山を監督するダンドゥ・ラジ・ギミレは、遺体の表出はこの地域がすでに変化していることを示していると指摘する。昨年にシェルパたちから複数の遺体発見が報告されたことで、観光局は遺体を安全に収容する方策について検討し始めた。
今年の春の登山シーズン(通常は5月末まで)を前に、観光局は登山関連事業者らに対し、エベレストやそのほかの山々に残されている死亡した登山家のリストをまとめるよう要請した。
ボランティアが今年に入ってエベレストで回収したペットボトルや古いロープ、テント、缶詰などのごみは10トン近くに上る。清掃活動は遺体収容の機会ともされ、4月には身元不明の遺体4体が見つかった。