登山者を恐怖に陥れるあの「エベレスト」の惨状

温暖化で遺体があらわになってきている

ギミレによると、それらの遺体は収容され、検視のためにカトマンズに移送された。身元が判明しなければ、警察当局が遺体を火葬する予定だ。「氷雪の中から表出したものは、すべて回収するつもりだ」とギミレは言う。

夏でも気温は氷点下20度近くになり、酸素濃度が地上の3分の1ほどのエベレストの高地では、そうした作業が行われる見込みはない。高所では、山の厳しさを突きつける目印になっている遺体もある。

「グリーン・ブーツ」と名付けられた遺体も

下山中に死亡したアメリカ人女性の遺体は、2000年代に別の登山家が旗で包んで人目に触れないところに移動させるまで、頂上付近に何年も残され、「スリーピング・ビューティー」と呼ばれていた。

標高8500メートル付近には、身に着けた鮮やかな色のブーツから「グリーン・ブーツ」と名付けられた遺体が石灰岩の下に丸くなっている。1996年に猛吹雪に見舞われて死亡したインド人登山家とみられ、そのときの事故はベストセラーとなった書籍『空へ エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか』の題材になった。

多くの登山家にとって、こうした遺体はエベレストの危険を再認識させるものだ。ノルウェーの登山家、ヴィベケ・アンドレア・セフランドは、2017年の登山中に自らの友人を含む登山者の遺体4体を目撃した。

「そのことは間違いなく私に影響を与えている」と彼女は言う。「初めて遺体を見つけたとき、自分のヘッドライトが遺体をとらえたときというのは、非常に衝撃的だ。私はいつも立ち止まって、亡くなった人に短い祈りをささげる」

© 2019 The New York Times News Services 
(執筆:Bhadra Sharma and Kai Schultz、翻訳:中丸碧)

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