日本の高齢化は進行速度も速く、かつ今後予想される高齢化の水準も他の先進諸国よりも高い。しかし、高齢化自体は先進諸国のみならず、多くの新興国でも起こっていることだ。1995年以降の欧州主要国の家計貯蓄率を見ると、英国、イタリアでは低下傾向が見られるが、フランス、ドイツではほとんど横ばいだ。
日本ほどの速度ではないものの、高齢化の進展は先進国共通の現象である。65歳以上人口の割合は、ドイツでは1995年の15.4%から2017年には21.2%に上昇し、フランスでは14.8%から19.2%に上昇している。
高齢者の就業と私的年金の拡充は効果がある
高齢化が進んでいるにも関わらずドイツやフランスで家計貯蓄率が低下していない原因の1つは、高年齢者の就業が増えたことだ。第1次石油危機ごろから、欧州では若年失業者が大きな問題であったために、年配の労働者を早期に退職させて若年失業者を減少させようとする政策が行われてきた。しかし、人口構造の高齢化が進む中で、社会保障制度の収支問題や労働力不足問題への対処が課題となり、企業に対する高齢者の雇用促進、高齢者に対する就労促進を行う方向へと政策転換が行われている。
ドイツでは老齢年金の支給開始年齢が2012年から2029年にかけて、65歳から67歳に引き上げられている。このため、55歳~64歳までの就業率は大きく上昇している。フランス、イタリア、英国はドイツほど大きなものではないが、この年齢層での就業率の上昇がみられる。
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