アメリカ為替政策報告書に見るトランプの不満 ドル高へのいらだちとユーロ圏への不信感
「ドルは過大評価」との基本認識か
また、今回は「Foreign Exchange Markets」の項においてドル高への懸念とも取れる記述が見受けられた。同項は「2018年のドルは名目実効ベースで5%上昇し、2017年の下げを取り戻した」との評価で始まっている。基本的には米経済の相対的な強さとその結果としてのFRB(連邦準備制度理事会)の引き締め的な路線を反映した動きと整理されているようだが、「懸念すべきことに、実質実効ベース(REER)で見るとドルは過剰評価とIMFが判断している」とも述べており、現状のドル高がフェアとは考えていないようだ。
2018年を通じてドルのREERは4.5%上昇しているが、これによって「20年平均を8%上回った」と述べられている。このドル高が経常収支および貿易収支の不均衡をさらに悪化させているとの論を展開しており、暗に是正すべき対象としてのドル高が示唆されている。
ちなみに同項ではIMF分析を引用する格好で「経常黒字にもかかわらず過小評価」とされている通貨と「経常赤字にもかかわらず過大評価」とされている通貨が示されており、前者の筆頭格がドイツ(にとってのユーロ)、後者の筆頭格が米国のドルという位置付けになっている。円も前者のグループに入っているが「2018年、対ドルで上昇した唯一の通貨」としての言及もあり、それほど反感は買っていないようにも見える。
ちなみに、懸案の人民元については「概ね中立~やや過小評価」という印象であり、この辺りはトランプ政権として主張したい方向とはややずれているが、報告書内ではそうしたIMFの分析には特に言及はない。いずれにせよ、米財務省として「ドルは過大評価」という基本認識を抱いていそうな雰囲気は見て取れ、米国の通貨・金融政策ひいては為替市場の方向感を見定める上では重要な情報であると考えられる。
※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です
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