広告業界「万年3位」ADKは今どうしているのか 上場廃止から約1年、大変革期を迎えている
事業構造を大きく変えようとする企業が、それぞれの分野のプロを引き入れることは珍しくない。もともと広告業界は人材の流動性が高い。それらを考えても、最近のADKはキーマンの入社が目立つ。
ADKホールディングスの植野伸一社長は「最近、自薦他薦を問わず人材の紹介や売り込みが多くなった」と驚く。外部から来る人たちが言うのは「ADKが困っているなら助けてあげたい」「ADKのサイズ感がいい」。ADKは業界3位と言っても、グループの社員数は2239人(2019年4月末)。電通の6.2万人、博報堂の2.1万人(いずれも2018年12月末)と比べると文字どおりケタが1つ小さい。そうした中で「ADKなら自分で新しいことができるかもしれない」と思うのかもしれない。
アニメ事業にも外部人材
稲田CTOは「広告業界って、なんとなく変な業界。広告代理店と言われるが、何の代理店なのか。(外部からの人材は)ADKというサイズ感なら、業界慣行を変えていけると感じるのではないか」と語る。
経営陣だけではない。現場にも新しい血が増えている。例えばADKの特徴の1つであるアニメ関連。前身の旭通信社が1960年代にヒーローアニメ「エイトマン」から手がけ、テレビ業界で足場を作るきっかけとなった事業だ。
原作を見つけ、製作会社とともにコンテンツを作り、スポンサーを連れてくる。連動する商品の企画やイベントなども収入源になる。「ドラえもん」「ワンピース」「新テニスの王子様」。ADKは誰もが知るような強力タイトルを数多く抱える。
そうしたアニメビジネスにも新しい人材が入っている。音楽製作大手のエイベックスでアーティストのイベントや商品開発を手がけたプロ、ゲーム会社のプロデューサー、中国上海で欧米系広告会社に在籍した人材……。
アニメは今後、版権を活用した新事業や海外進出を進める。例えば、吉本興業と手がける熊本県のゆるキャラ「くまモン」のアニメ化では、アメリカ・ハリウッドのチームが制作に加わり、世界での配信を想定する。さまざまな分野から人材が入っているのは、今後の新展開を見据えてのことだろう。
デジタルの分野では人材の専門性がより問われるという側面もある。大山CDOは「現在のADKには、EC(ネット販売)やソーシャル、運用型広告など各分野のプロと、コンサルタントのように全体がわかるプロの両方が必要」と語る。自身が電通時代に立ち上げたデジタル専門の広告会社、電通デジタルでも、電通出身者と独自採用者の比率は半々から始めた。デジタル分野での飛躍を進めるには、外部人材の積極採用は不可欠になる。
もちろん、外部からプロが来ただけで組織は変わらない。ADKでは外部からの人材がファンクション(機能)リーダーを務める場合も、事業リーダーは従来からの人材がそのまま担うことが多いという。外部の知見と社内人材との融合が、新しいADK成功のカギを握る。
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