広告業界「万年3位」ADKは今どうしているのか 上場廃止から約1年、大変革期を迎えている

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もう1つの変化が、他社との提携だ。ADKでは今年に入って日本IBMと提携し、デジタル技術を活用して企業の顧客理解を支援するコンサルティングサービスを始めた。4月には、同業のジェイアール東日本企画、東急エージェンシーと、消費者行動のデータベースを共同で構築する新会社を設立した。後者は広告業界の3位以下の企業が組み、大手2社を追撃するかたちだ。

デジタルの分野では、データサイエンティストを多く抱える新興企業のGRIとの提携も発表している。現在のADKは、WPPとの資本解消によって、タガが外れたように他社との提携戦略を加速させている。

自社で足りないところは、外部から積極的に人を受け入れ、必要とあらば他社と提携する。人材が豊富で、多くを自前でまかなうことができる大手2社とは対照的な戦略といえる。

持ち株会社化で「専門性」を高める

非上場化して1年目の2018年12月期は「利益は順調に伸びた」(植野社長)。ただ、もともと「どんぶり勘定」とも言われる業界にあって、従来の業務の見直しによって、短期的な利益を出すのはそう難しいことではない。

問題は、今後いかに攻めに転じるか。ADKは今年1月、持ち株会社体制となり、ADKホールディングスとして再出発した。持ち株会社の下には、広告営業、アニメなどのコンテンツ、広告製作などのクリエーティブがぶら下がる格好になる。

ADKホールディングスの植野伸一社長(撮影:尾形文繁)

キーワードは「専門性」だ。独立した個社が競い合いながら、専門性を追求していく。コンテンツを手がける子会社の名は「ADKエモーションズ」。視聴者や消費者に、もっとワクワクを与えようという想いがこもっている。

広告製作などの子会社「クリエイティブ・ワン」が掲げるのが、ブティック戦略だ。昨年の7月には、社内の若手クリエーター6人が独立してブティック「CHERRY」を設立(ADK100%出資)、企業やブランドと消費者の新しい関係作りを模索する。ほかにもこうしたブティックが立ち上がっており、社内のクリエーターたちも今後は得意分野ごとにバーチャルなブティックを形作る構想だ。

「ベインが入ってから、これまで1年かかっていたことが、半年あるいは4カ月でできるようになった」(植野社長)。戦略の方向性が見えてくるなかで、これから問われるのは、実際の成果になる。ファンドが入った以上、再上場を軸としたイグジット(出口)戦略は不可欠。2年後、3年後といった一定の期間で、真の成長性を備えられるか。TOBの本当の成果を問われるのはこれからになる。

「週刊東洋経済プラス」に植野伸一社長のインタビューを掲載しています。ぜひご覧ください)

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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